「エンゼルス時代にドジャースは簡単にPO出場しているように見えたが入団すると大変だった」大谷翔平がUSAトゥデイ紙敏腕記者の独占取材で激動の1年を振り返った
ドジャースの大谷翔平(30)がUSAトゥデイ紙のボブ・ナイチンゲール記者の独占インタビューに答え、7億ドル(約1050億円)の契約、水原一平通訳に口座から大金を盗まれた事件、そして前人未到の「54―59」の達成から“世界一”、3度目のMVP受賞までの激動の1年を振り返った。また同記者はドジャースのフロントや代理人などの周辺取材も行い、多くの秘話を伝えている。
なぜFA交渉で秘密主義を貫いたのか
米メディア初の独占インタビュー。野茂英雄氏のメジャー挑戦時は、LAタイムズ紙のドジャース番記者で、USAトゥディ紙に移籍後も、数々のスクープを連発し、敏腕で知られるナイチンゲール記者が、4日(日本時間5日)の午後にロサンゼルス市内のスタジオでコマーシャル撮影の合間をぬって大谷を独占取材した。
通訳のマット日高氏を通じて大谷は「期待以上だった。初めてプレーオフに進出し、私たちはワールドシリーズを制覇した。これ以上何を求めることができますか?」と、今季を振り返った。面白かったのは、エンゼルス時代に見ていたドジャースと、実際にチームの一員となったときの違いについて語ったコメント。
「エンゼルスにいたときに、外から見るとドジャースがプレーオフに進出するのは簡単そうに見えた。でも実際チームの一員になるとプレーオフに進出するだけでも本当に大変だった。パドレスには終盤に大きく追い上げられ、彼らから逃げ切るのは厳しい経験だった。でも、それもとてもスペシャルで感動的だった。本当に楽しかった」
ドジャースは10年連続でプレーオフ進出を決めたが、終盤には、パドレスの猛追で一度点滅したナ・リーグ西地区の優勝マジックが消滅するなど崖っぷちに追い込まれていた。だが、エンゼルス時代に、一度もプレーオフ進出を果たせなかった大谷にとって、それらの「ヒリヒリした戦い」に充実感を覚えていたのである。
同記者は、丹念に周辺を取材し、代理人のネズ・バレロ氏からは、ドジャース、ジャイアンツ、ブルージェイズの3球団と争奪戦になった際の秘話も聞きだした。
大詰めを迎えた際に「大谷がトロント行きの飛行機に乗った」との情報が駆け巡った。交渉を続けていた各球団から確認の連絡が入り「私も翔平も飛行機には乗っていない」と返答したが、そのブルージェイズからだけは連絡がなかったという。
「ジャーナリストがしたことはあまりにも無謀だった。それは球団(ブルージェイズ)、球団のファン、そしてカナダという国を傷つけた。本当に申し訳ない気持ちになった。なぜなら、その情報が出た1分間、彼らは、みんな彼が来ると感じたからだ。それが交渉プロセスで最大の失望だった。(それを避けるために)翔平と私は黙っていたんだ。憶測や噂が流れて、私たちの交渉に影響を与えることはしたくなかった」
バレロ氏と大谷が徹底して交渉情報を表に出さなかったことを「秘密主義だ」とバッシングもされたが、そこには、そういう狙いがあったという。
大谷はドジャースとメジャー最高額となる10年7億ドル(約1050億円)の契約を結ぶわけだが、そのうち6億8000万ドル(約1020億円)を無利子で後払いにしたという契約内容が衝撃を与えた。これは「完全に大谷のアイデアだった」という。
「給料の全部または一部を延期したらどうなりますか?私は経済的に大丈夫です」
バレロ氏は大谷から投げかけられた言葉をこう明かしている。
「業界に大きな波紋を呼んだが、翔平にとって(自分の契約で)球団に悪影響を与えないことがとても重要だった。ドジャースが、毎年、競争力を持ち(いい)選手と契約してチャンピオンシップレベルのチームをまとめることが重要でそれが彼の究極の目標だった。彼には、ビジョンがありそのビジョンをすべて実現した」