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ヴィッセル神戸のMF武藤嘉紀が初のMVPを受賞した
ヴィッセル神戸のMF武藤嘉紀が初のMVPを受賞した

ヴィッセル神戸MF武藤嘉紀のMVP秘話…「パパ、東京のチームに来れないの?」最愛の家族からの1本の電話

 Jリーグの年間表彰式、Jリーグアウォーズが10日に横浜アリーナで開催され、史上6チーム目のJ1リーグ連覇を達成したヴィッセル神戸の元日本代表MF武藤嘉紀(32)が、MVPにあたる最優秀選手賞を初受賞した。チーム最多の13ゴールをあげた武藤は、アシストも同2位の7をマーク。中盤の右サイドで守備力も発揮し続けるなど、インテンシティーの高い神戸のサッカーの象徴を担った。プロになって11シーズン目。何度も怪我や挫折を経験した武藤は、なぜ自己最高のシーズンを送れたのか。

 紆余曲折のサッカー人生

 異論も文句もない堂々の戴冠だった。
 Jリーグアウォーズを締める最優秀選手賞の発表。すでに発表されていたベストイレブンのなかから、Jリーグの野々村芳和チェアマン(52)に自身の名前を読みあげられた瞬間、武藤はまず視線を下へ落とし、次に横浜アリーナの天井を見つめた。
 慶應義塾大からFC東京入りした2014シーズンに、いきなり13ゴールをマーク。翌年7月にはヨーロッパへ渡り、マインツ(ドイツ)とニューカッスル・ユナイテッド(イングランド)、エイバル(スペイン)でプレー。2018年には日本代表としてW杯ロシア大会に出場し、2021年8月に神戸へ加入した。
 漆黒のタキシード姿の武藤は受賞後のスピーチで「僕自身、一見華やかな経歴に見えますが――」と断りを入れたうえで、自身のキャリアにこう言及した。
「数多くの怪我や挫折、紆余曲折を経ていまがあります。ヨーロッパでは1年間以上もベンチにすら入ることができず、家を出るときのドアがとても重たく、帰り道には泣きながらMrs. GREEN APPLEさんの『僕のこと』を熱唱して運転した日も鮮明に覚えています。そんな苦しい経験、逃げ出したくなるような経験が僕を人として、サッカー選手として強くしてくれたといまでは感謝しています」
 ベンチに入れず、実質的な戦力外となったのは、ニューカッスル時代の2019-20シーズンから翌シーズンにかけて。ひるがえって神戸では、加入3年目の昨シーズンに全34試合に出場して、10ゴールをあげてリーグ初優勝に貢献した。
 試合数が増えた今シーズンも、2月の開幕戦こそ欠場したものの、第2節以降はすべてのリーグ戦に出場し、プレータイムもアタッカー陣では最長となる3088分に達した。チーム最多の13ゴールだけでなく、FW大迫勇也(34)の9に次ぐ同2位の7アシストをあげる活躍ぶりで、MVPの最有力候補にあげられていた。
 何が武藤の好調ぶりを支え、最高峰の個人タイトル獲得へ導いたのか。ひとつは“アルコール断ち”がある。史上6チーム目となる連覇を達成した8日の最終節後。神戸市内のホテルへ会場を移し、盛大に行われた歓喜のビールかけを終えた武藤は「ビールもちょっと飲んで、久しぶりに酔いが回りました」と苦笑している。
「飲んだのは何カ月ぶりかな。オフが終わって、今シーズンが始まる前にちょっとだけ飲んだかな、くらいの感じです。シーズン中もビールを飲みたくなるときがありますけど、連戦が続くなかでコンディションを落としたくないし、筋肉系のトラブルも絶対に避けたいと思うと、一時の快楽は我慢しなくちゃいけないと思ってきました」

 

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