なぜ日本代表監督を目指す本田圭佑は頑なに日本サッカー協会の指導者ライセンス制度に“ノー”を突きつけるのか?
サッカーの元日本代表MF本田圭佑(38)が、日本サッカー協会(JFA)が管轄する公認指導者ライセンス制度にあらためてノーを突きつけた。26日に千葉・船橋市内で行われた、自らが考案した4人制サッカーの全国大会決勝後に取材に応じた本田は、日本代表監督を目標に掲げながら、就任の条件となる最上位のS級ライセンスを「取得する気持ちは一切ない」と持論を展開。さらに「この議論において僕を説得できる人間はいない」とまでつけ加えた。頑なに我が道を進むのはなぜなのか。
「なんのためのライセンスなんだ!」
制度そのものは否定しない。それでも、JFAが管轄および発行する公認指導者ライセンスは取得しない。本田があらためて持論を展開した。
この日は千葉・船橋市のLaLa arena TOKYO-BAYで行われた、本田が自ら考案した育成年代向けの4人制サッカー「4v4」の全国大会ファイナルを主催。FW三浦知良(57、アトレチコ鈴鹿)らとともにU-10およびU-12優勝チームとのスペシャルマッチ、さらにレジェンド同士によるドリームマッチに臨んだ後に取材に応じた。
質疑応答で昨シーズン限りで引退した長谷部誠氏(40)が森保ジャパンに臨時入閣し、2020年夏に引退した内田篤人氏(36)がなでしこジャパンのコーチを務めるなど、日本代表時代の盟友たちが指導者の道を歩みはじめた状況を問われたときだった。
長谷部氏や内田氏のように、代表レベルでコーチとして呼ばれたら、教える側となる思いはあるのか――本田は「監督のオファーがあれば、いつでも」と即答した。
「僕自身は一応、男子のサッカー選手として日本代表のワールドカップ優勝を小さなころから志してきましたけど、それ(優勝)がかなわなかったので、次は指導者として目指したい。それも最短の道を歩みたいと思っているので」
日本代表監督に就任するためには、JFAが発行する最上位の公認指導者ライセンス、S級ライセンスの取得が資格上の絶対条件となる。今年10月にS級ライセンスはProライセンスと改称されたが、これまでの流れは以下のようになる。
取得にはアマチュアチームを対象としたC級を皮切りに、アマチュアチームへ質の高い指導ができるB級、全国レベルで指導ができるA級ジェネラルを順次取得。数年の時間をかけた先に初めてS級養成講習会の受講資格を得られる。
もっとも、あくまでも資格であり、実際にS級養成講習会を受講するには実技実践と面談で構成されるトライアルに合格しなければいけない。年度単位で行われるS級養成講習会の受講者は16人から最大で20人。そこへA級ジェネラルの取得者が、毎年のように数百人単位でトライアルへ申請してくる。
さらに、S級養成講習会のカリキュラムも生半可なものではない。
原則として5段階に分けられている国内集中講習会などで拘束される日数は、少なくとも60日前後に及ぶ。講義内容はサッカーの指導方法にとどまらず、メディカルや心理学など多岐にわたる。そこへ修了後のリポート提出が義務づけられたインターンシップが、国内と海外とで計3週間以上にわたって課される。
一連のカリキュラムを修了した上で、筆記および口頭試験、指導実践、リポートのすべてで合格した後にJFAの技術委員会にて審査。そのうえで同理事会の承認を経て、ようやくS級取得が認定される。受講者が所属する組織や団体の理解だけでなく、100万円単位の費用も工面する必要も出てくる。文字通りの狭き門だ。