「え?」井上尚弥がまさかのグッドマンの2度目の直前負傷キャンセルに絶句…”日本人キラー”世界11位の韓国人ファイターを代替選手に防衛戦は予定通り実施
プロボクシングの大橋ジムの大橋秀行会長(59)は11日、横浜の同ジムで緊急会見を開き、1月24日に有明アリーナでスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)と対戦予定だったサム・グッドマン(26、豪州)が再び左目上を負傷したため、対戦相手をWBO世界同級11位のキム・イエジョン(32、韓国)に変更することを発表した。当初この試合は、昨年12月24日に行われる予定だったが、来日直前の公開スパーリングでグッドマンが左目上を4針縫う怪我を負ったため1月24日に延期となっていた。不測の事態に備えてリザーバーを準備していた大橋会長は「想定内だったが、さすがに今回は井上尚弥もビックリしていた」と説明した。
代替の韓国ファイターは日本人に7戦7勝の元地域タイトル王者
「え?」
この日の早朝にグッドマン負傷のニュースの一報を受けた大橋会長が、すぐさま井上尚弥に電話で伝えると、一瞬、絶句したという。
「早朝の私の電話なんで、ある程度、覚悟はしていたと思うんですが。さすがにビックリしていました」
グッドマンが再び傷口を開いたのは10日までのマススパー。大橋会長が相手陣営から受けた連絡によると「前回より3倍傷が大きく試合はできない」ということだったという。
「小学校から50年以上、ボクシングを見ているが、こんなことは初めて。自分にとっても、井上にとっても、こんな経験はできない。いいキャリアだと前向きにとらえている」
大橋会長は半ばあきれたように言った。
当初、この試合は昨年12月24日に行われる予定だったが、12月14日の現地の公開スパーで左目の上をカット。4針を縫うことになり延期となった。開催時期については、グッドマン陣営が「40日あればOK」と申し入れてきたため、1月24日に設定した。
古くは“キンシャサの奇跡”と呼ばれた1974年10月30日にザイール(現コンゴ民主共和国)のキンシャサで開催されたモハメッド・アリ(米国)とジョージ・フォアマン(米国)との伝説のWBC&WBA世界ヘビー級戦でも同じような事態が起きた。試合の8日前にフォアマンがスパーリングで右目上をカットする怪我をして、当初は、9月25日に行われる試合が10月30日まで5週間延期された。それを基準に治癒期間を考慮すれば、1月24日に再セットされたのは順当だろう。
一度目の怪我はグッドマンには気の毒な不慮のアクシデント。しかし、今回の2度目の怪我は、相手陣営の注意不足と言っていい。
一度カットした場所は開きやすい。元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎が目を保護するために使っていたフルフェイス型のヘッドギアや、怪我した箇所をあらかじめ、テープで保護しておくなどの万全の準備が必要。そういう対策をしていたのか、どうかも疑わしい。
それでも大橋会長は、「試合は、勝つために強くなるか怪我をするか、ギリギリの戦い。勝ちにきて最後に怪我をしてしまった。後から全治半年と聞いた。きっちりと傷を治してもらって、また機会があれば戦えれば」と”大人の対応”をした。
もうグッドマンとは戦わなくていいのでは?と筆者は思うが、大橋会長は「指名試合を維持していれば、いろんな意見は出るが、チャンスがあればチャンスを与えたいと思っている」と、WBOとIBFの1位にいるグッドマンが、指名挑戦権を持つ限り、対戦の可能性が消えていないことを示唆した。ただ度重なるキャンセルで長期離脱となるグッドマンのランキングを両団体が下げる可能性はある。その場合はもう二度と井上と拳を交える機会はないだろう。
大橋会長は不測の事態に備えてリザーバーを用意していた。
「想定内。こういうこともあるのかなと思っていた」