「グッドマンより遥かに期待してもらっていい」井上尚弥と緊急対戦する韓国のWBOオリエンタル王者キム・イェジュンが豪語…日本人に7戦7勝で「日本人との対戦は一番簡単。特性を知っている」
プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)が24日に有明アリーナで対戦するWBOオリエンタル同級王者でWBO世界同級11位のキム・イェジュン(32、韓国)が15日、韓国ソウル江南の「STSボクシング」で公開練習を行い、独占ライブ配信するNTTドコモ「Lemino」の代表取材に応じた。WBO&IBF同級1位のサム・グッドマン(26、豪州)が左目上の負傷を再発させて2度目のキャンセルを申し出たための緊急代役で、圧倒的な不利が予想されているがキムは「井上選手はただの練習相手。グッドマン選手よりは遥かに期待してもらっていい」と豪語した。
「井上選手はただの練習相手」
心理戦なのか、これがモンスターと戦うスタイルなのか。
独占ライブ配信する「Lemino」の代表取材陣の前で練習を公開したキムは、シャドー、サンドバッグ打ち、トレーナーとのミット打ちと、そのすべてをサウスポースタイルで通した。ワンツーに時折アッパーも交えて軽快に動いた。
元々は、右構えのオーソドックススタイルだが、スイッチして戦う器用さがあり、2023年4月に米国へ遠征して僅差の判定でキャリア2敗目を喫したロブ・ディーゼル(米国)戦では、終始サウスポースタイルで対峙していた。
「元々の私は、井上選手に耐えられるレベルにはない。そこに戦略を加えると、また別の試合が現れるので、そこにちょっと期待してもいいと思う」
その戦略のひとつがサウスポースタイルなのかもしれないが、井上は5月のルイス・ネリ(メキシコ)、9月のTJ・ドヘニー(アイルランド)と続けてサウスポーを撃破しており、苦手意識などまったくない。
それでもキムはこう豪語した。
「私が思うに井上選手は今までのキャリアを通じて私のような選手と対戦したことがない。彼が今どんなことを考えているのかはなんとなく予想はつく。でも、それが全然違うということを言いたい。多分リングの上で私と一度パンチを交えると、私が今何を言っているのか分かると思う」
虚勢を張っているわけではなく、自信にあふれた態度で、過去に韓国ボクサーと対戦経験のない井上が準備している戦略に疑問を投げかけた。
緊急抜擢となった。1か月前にリザーブマッチへの出場打診が来たため、減量をする程度の軽い練習をスタートさせていた。リザーバーから代役抜擢の連絡を受けたのが、グッドマンの左目上の傷がマススパーで14針を縫うまでに大きく開いてしまい中止が決まった11日。それでも「昔から私はすべてのトレーニングとパターンを井上選手のために行ってきた。私の階級で井上選手は一番上手な選手だから、いつも私にとって練習相手だった。だからプレッシャーはあまりない」と焦りはない。井上には「リラックスして落ち着いている。私と性格も似ていると感じた。よく知っているような感じがする」との印象を抱いているという
井上は怪物なのか、それとも同じ人間なのか。
その質問にキムはこう返した。
「井上さんは、ただ私の練習相手で、ただのスパーリングの相手かもしれないし、試合の相手かもしれない。いつも私が一緒に練習してきたと思っているからそういう存在。ただの練習相手だ」
しかし、こうも説明した。
「いつもついて行くことができなかった。テンポに合わせなければならないので、他の付随的なトレーニングをたくさんしなければならないし、それによって私を強くしてくれた」
特にテンポアップを強化のポイントに置いた。加えて、ランニング、ウエイトトレーニング、そしてメンタルを鍛えた。井上のレベルに追いつくための努力を重ねた。今回は豪州で昨年5月に武居由樹に敗れて王座を失った前WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニー(豪州)ともスパーを重ねた。
「やればやるほどだんだん近づいてきた。もうほとんど追いついたところでやる(対決する)ことになった。完全に追いついたわけではなく、戦略的に狙っていくつもりだ」