「ソフトバンクは人的補償の指名で巨人との違いを見せた」巨人大物OBがFA甲斐拓也の人的補償に小林誠司でなく28歳右腕の伊藤優輔を指名したホークスの戦略を称賛
ソフトバンクがFAで巨人へ移籍した甲斐拓也捕手(32)の人的補償として指名したのは、噂された小林誠司捕手(35)ではなく伊藤優輔投手(28)だった。正捕手が抜け、苦しい台所事情でありながら目先の補充ではなく、数年先を見据えて伊藤を指名したソフトバンクの球団戦略を巨人OBでヤクルト、西武で監督を務め、ロッテでは日本初のGMにも就いた広岡達朗氏(92)は「小林を取ると思っていたが、育成で売っているソフトバンクは巨人とは違い、さすがに見るところを見ている」と称賛した。ソフトバンクは伊藤を先発で起用する方針だ。
育成のソフトバンク
そのソフトバンクの人選は辛口で知られる巨人の大物OBを感心させた。
「ソフトバンクはさすがに見るところが違う。育成で売っているチームだけある」
広岡氏は甲斐の代役として小林を指名すると予想していた。
FA権を行使して巨人へ移籍した甲斐は、昨季102試合に先発マスクをかぶり、119試合に出場して、打率.256、5本塁打、43打点の好成績を残し、7度目のゴールデングラブ賞を獲得した正捕手。その抜けた穴を埋めるメインは、大関友久、大津亮介の先発時の限定捕手として昨季38試合に先発マスクをかぶり、51試合に出場した海野隆司になるのだろうが、そこに谷川原健太、嶺井博希を加えた3人で回すのは、まだ心もとない。
一方の小林はオリオールズに移籍した菅野智之の専属捕手として、主にマスクをかぶり、昨季は42試合に出場した。ファンや評論家の中から「ソフトバンクは小林を指名すべき」の意見が出たのも無理はない。
「私は、小林を指名するものだと思っていた。現場は、当然、甲斐の抜けた穴を埋めたかっただろう。キャッチャーはいないからな。巨人側から見るとキャッチャーは甲斐に加えて、昨年結果を残した岸田(行倫)の2人がいれば十分。コンビを組んでいた菅野もいなくなり小林は、28人のプロテクトから外れていただろう。彼は巨人の将来の幹部候補生。外の水を飲むことは小林が今後、指導者の道を歩むことへのプラスになるとも私は考えていたが、ソフトバンクは、フロント主導で目先の補強ではなく、総合的に判断して28歳の投手の可能性を評価した。投手は何人いてもいい。もう28歳だが、来年、再来年と見据えての人選だろう」
伊藤は、都立小山台高校時代から質のいいストレートが評判を呼び「都立の星」と騒がれた右腕。中大、社会人の三菱パワーを経て球速も最速156キロまでアップし、2020年のドラフト4位で巨人に入団したが、1年目に右肘のトミージョン手術を受け、そのオフには育成選手となって遠回りした。だが、時間をかけて回復して、昨季は、支配下登録に復帰し、プロ初登板を含む8試合に登板し1ホールド、防御率1.04の成績を残した。150キロ台のストレートにカットや抜いたボールで三振が取れ、ファームではクローザーとして40試合に登板、4勝0敗、14セーブ、防御率1.29と結果を残した。阿部慎之助監督は、昨秋のキャンプで、“ポスト菅野”の一人として先発転向を命じていた。