今日ゴング！「気がついたらダウンしているパンチ」井上尚弥がグッドマン戦2度中止の特異な状況で韓国人の代替ボクサーのキムを相手に試される3つの重大事項とは？

　プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥（31、大橋）の防衛戦（24日・有明アリーナ）の前日計量が23日、横浜市内のホテルで行われ、王者と、左目上の怪我の再発で辞退したサム・グッドマン（26、豪州）の代役で挑戦者となったWBO世界同級11位のキム・イェジュン（32、韓国）が揃ってリミットの55．34キロを140グラム下回る55.2キロでクリアした。延期、相手の交代というアクシデントを乗り越えてリングに上がる井上は「待ち遠しい」と素直な気持ちを明かしたが、大橋秀行会長（59）は「韓国版ロッキー。日本人が勝てなかった韓国人ファイターの片鱗がある」と警戒心を解かなかった。井上が特異な状況で迎える4つのベルトのV3戦で試される3つの重大事項とは？

　「いよいよ。ゴングが待ち遠しい」の本音

　うずうずしている。
「いよいよだなと。2カ月は長かった。試合が延期、中止と2度あったのですごく楽しみで、待ち遠しい気持ちがある」
　昨年12月24日に予定していたグッドマン戦が左目上の負傷で1か月延期となり、今度は試合の13日前に、負傷箇所が再び開いたことが発覚して相手がリザーブファイトに出場予定だったキムに交代。度重なるアクシデントを乗り越えての特異な防衛戦となっただけに計量を終えた井上が、そう語るのも無理はない。
　計量では惚れ惚れとする肉体美を披露した。
「1か月の延期で体の仕上がりにはプラスになった」という井上の筋肉は、昨年9月のTJドヘニー（アイルランド）戦時に比べて濃淡が濃く映った。わずか140アンダーではあるが、よりシャープになった印象だ。前回は、当日体重を10キロ以上増やしてくるドヘニー対策でパワーアップと増量を意識していたが、今回は総合型ファイターのグッドマンに備えてスピードに重点を置いてトレーニングを積んできた。　
　直前で相手が変更になったが、その名残りはその肉体に出ていた。
「少しずつ体もでかくなってスーパーバンタムの体が完成に近づいている」
　井上も自画自賛だ。
　昨年5月6日のルイス・ネリ（メキシコ）戦から初めて減量に“水抜き”を取り入れた。これが3回目。細胞の浸透圧の関係で水分を排出しやすいように塩抜きも並行して行うので、そのタイミングと量など微妙な調整が必要になってくるが、元3階級制覇王者の八重樫東トレーナーや、再起を決めたいとこの井上浩樹のアドバイスなどで極意をつかみ井上は「今回が一番うまくいった」と手応えを感じている。
　ドヘニー戦では、リカバリーで約7キロを増量させて当日体重は62．7キロだった。ネリ戦よりも700グラムプラス。キャリア最重量だった。
　では今回はどうか。
「相手が変わったのでイメージが違う。スピードボクシング重視にする必要はない。リカバリーは感覚的に戻していく」
　特段意識することなくごく自然にベストで動ける当日体重を作りたいという考え。最強の井上尚弥でリングに上がる決意の表れである。
　代役となったキムとのフェイスオフは約13秒。井上は自ら目を離した。両手が4本のベルトで塞がっていたこともあって握手はしなかった。
「あえてではないが体は見なかった」が伝わってきたものはある。
「なんか臆することなく、この試合に挑んでいると思う。気持ちは強い。あきらめることなく向かってくると思う」