「左目とボディが痛い」井上尚弥にKO負けのキムが一夜明け会見をサプライズ訪問…そして弟の拓真との対戦を熱望?!
4つのベルトの3度目の防衛に成功したスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(31、大橋)が25日、横浜の大橋ジムで一夜明け会見を行った。会見の終わりには4回に倒された挑戦者のキム・イェジュン(32、韓国)がサプライズで現れて「ここが痛い」と、KOパンチを浴びた左目を指差した。ファンに温かく迎えられた日本での試合を希望するキムは、弟で再起に向けて動きだしている元WBA世界バンタム級王者の拓真(29、大橋)との対戦を熱望した。
ドス黒く腫れた左目
それは珍しい出来事だった。
大橋ジムでの井上の一夜会見が終わり、報道各社の個別インタビューが始まっている最中にKO負けした挑戦者のキムが「チャンピオンに挨拶をしたかった」と突然現れたのだ。宿泊ホテルで偶然、顔を会わせるようなことがあっても、敗者が勝者を試合後に訪れるケースはあまり見ない。
井上も笑顔で出迎えて握手した。
キムは腫れてドス黒く変色した左目の下を指差して「パンチは強かった。痛かったです」と笑って打ち明けた。
井上は「ガードの上から?」と聞いたが、「いえいえ、直接」とクビを大きく振った。それは4ラウンドのフィニッシュブローの一撃でできたものだった。
左フックを効かされて、ロープを背負ったキムは、「来い!」と手招きをして井上を挑発した。「距離を近づけてカウンターを狙った」。いちかばちかの捨て身の戦法だったが、井上の闘志に「むっとした。絶対に倒してやろうと思った」と火をつけただけだった。
大橋ジムの松本好二トレーナーが「あの挑発で力まずに冷静に決めきるのがまた凄い」と感心していたが、井上は、その感情を押し殺して、冷静に米老舗の専門誌「ザ・リング」が「クラシックなワンツー」と評した基本パンチであるワンツーの右ストレートでキムをキャンバスに沈めた。
「強引にいくんではなくて、その中で組み立てるボクシングができた。急遽変わった相手に ああいうボクシングができたんで、自分の中では、いいボクシングができたかなと」
ダウンしたキムは、右の腰ああたりを抑えて立ち上がれなかった。
この日も井上に右の腹部を押さえて「ボディも痛かった」と伝えた。
真吾トレーナーは「右も左もボディがダメージを与えていた」と振り返った。
大橋会長も、キムとツーショットの記念撮影を撮った。
「助かった、彼のおかけで」
キムが代役を引き受けてくれなければ、この試合は成立しなかった。
「しかも1ラウンドからいきなり至近距離からプレッシャーをかけてきたからね。あの井上尚弥にね。やはりコリアンファイターは気持ちが強いよ」
勇気ある挑戦者を称えた。1か月前にリザーブファイトへの出場を打診した。サム・グッドマン(豪州)が、左目の傷を再び開いたのが13日前。キムは代役出場を快く引き受けた。サウスポースタイルで臨んだキムは、逃げ回ることなく、パウンド・フォー・パウンドに堂々と向かっていき、2ラウンドには左ストレートをクリーンヒットしている。