
「キャンプでも1回もやったことがない」東京ダービーを制したJ1町田ゼルビアの今季初勝利の裏に黒田監督の“名采配”あり
J1リーグ第2節が22日に行われ、FC町田ゼルビアが1-0でFC東京を振り切り、2試合目で今シーズン初勝利をあげた。敵地・味の素スタジアムに乗り込んだ町田は後半37分、左サイドからのクロスを新加入のFW西村拓真(28、横浜F・マリノス)が流し込んで移籍後初ゴールをマーク。武器にすえてきた堅守で東京ダービーを制した。負傷退場者が相次ぎ、昨シーズンは一度だけだった逆転負けをサンフレッチェ広島に喫した開幕戦から中5日。FC東京戦では町田を蘇らせた3つの“追い風”が吹いていた。
開幕戦で負傷したDF岡村大八がスタメン出場
昨シーズンとも、そして開幕戦とも異なる町田が敵地で勝ちどきをあげた。
敵地・味の素スタジアムに乗り込んだFC東京との東京ダービー。町田の先発メンバーが、少なからず驚きを与えた。広島との開幕戦で左太ももを負傷し、前半20分に退場していたDF岡村大八(28)が名を連ねていたからだ。
試合後の公式会見。このオフに北海道コンサドーレ札幌から加入した岡村の怪我が、打撲と明かした黒田剛監督(54)がこう続けた。
「炎症や痛みが引けばできるだろうと。治療、リハビリを繰り返しながら早い段階で復帰できたのが、われわれにとってはありがたい材料になった」
FC東京戦に間に合わせた岡村は、広島戦で務めた3バックの右ではなく真ん中でプレー。サガン鳥栖でプレーした昨シーズンに14ゴールをあげたFC東京の1トップ、マルセロ・ヒアン(22)との激しいバトルを制し続けた。
昨シーズンのデュエル勝利数でリーグ2位に入った岡村は、身長183cm体重85kgの屈強なボディをフル稼働させ、188cm83kgのブラジル人FWに仕事をさせない。後半19分には交代へ追いやった岡村の仕事ぶりを黒田監督も絶賛した。
「J1ではスピード、高さ、駆け引きなどに優れたフォワードがいるので、経験豊富なセンターバックがいるのといないのとでは全然違う。今日は岡村がマルセロ・ヒアンのよさを消す形でタイトに対応してくれた。本当に素晴らしかった」
フル出場を果たした岡村も、試合後にホッとした表情を浮かべた。
「状態は100%ではないけど、いまの自分にとっての最大限のパフォーマンスを発揮できた。開幕戦は僕の怪我で前半のうちに交代カードを切っているし、僕のせいで負けたと言っても過言ではないほど、チームに迷惑をかけてしまったので」
町田の攻撃陣に大きな変化が生じたのは、後半開始早々の6分だった。
1トップの韓国代表FWオ・セフン(26)に代えて、パリ五輪代表のFW藤尾翔太(23)が投入される。もっとも藤尾は最前線ではなく、元日本代表のMF相馬勇紀(27)とともに2列目でシャドーを形成。1トップには西村が回った。
オ・セフンが怪我をしたわけではない。ただ、接触プレーで小競り合いを起こしたFC東京のDF森重真人(37)を両手で突き飛ばし、前半39分にイエローカードをもらっていた。相手守備陣の徹底マークにあう状況で、広島戦でも警告を受けているオ・セフンの心理状態を見越しての交代だったと指揮官が明かした。
「相手のセンターバックにかなりがんじがらめになって、ストレスを抱えながらプレーしていたので、できるだけ前後左右に動き回れる態勢を取ろうと。ちょっと早い段階だったが、相手に的を絞られにくくなる状況も含めて勝負してみた」
町田の攻撃は194cm93kgの巨躯を誇るオ・セフンにロングボールを集め、セカンドボールを拾って攻めあがっていく形を軸としてきた。これを西村、藤尾、相馬を中心に、相手の最終ラインの裏へ抜ける動きも含めて機動力で勝負をかけた。
オ・セフンが2度目のイエローカードを受けて退場しかねない、という懸念もあったのだろう。もっとも、マリノス時代から2列目を主戦場としてきた西村は、殊勲のヒーローになった試合後に意外な言葉を残している。