
那須川天心が今日注目ゴング!「武居由樹との世界戦をやりたくてもすぐにはできない」…例え“難敵”元世界王者モロニーを撃破できても立ちはだかるボクシング界の特殊事情
プロボクシングの「Prime Video Boxing 11」(24日・有明アリーナ)の前日計量が23日、都内のホテルで行われ、出場6選手全員が一発でクリアした。WBOアジアパシフィックバンタム級王者の那須川天心(26、帝拳)は“世界挑戦査定マッチとして前WBO世界同級王者のジェーソン・モロニー(34、豪州)と119パウンド契約(53.98キロ)の10回戦で対戦するが勝っても次戦でWBO世界同級王者の武居由樹(28、大橋)との世界戦は組まれない。王者が指名試合を消化せねばならず、組みたくとも組めない世界のボクシング界特有の事情が背景にある。メインで防衛戦を行うWBC世界同級王者、中谷潤人(27、M.T)が熱望しているIBF世界同級王者、西田凌佑(28、六島)との統一戦も次戦での実現は難しいという。
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鋭い視線を飛ばしたフェイスオフを終えた天心は、モロニーと握手を交わし、元世界王者が背を向けると、腰を折り深々と頭を下げた。
「日本に来てくれていますし(ボクシング転向)6戦目の僕がやってくれるのは普通ではありえない。日本流のお辞儀で敬意を示させてもらった」
キックから転向6戦目の天心は、昨年5月、武居に判定で敗れてタイトルを失った30戦27勝(17KO)3敗のキャリアを誇るモロニーが“世界戦査定マッチ”を引き受けてくれたことへ感謝の思いを伝えた。礼を重んじる天心らしい儀式だった。
前日計量は119パウンド(53.98キロ)とアナウンスされた。両者共にリミットで一発でクリアした。天心は前戦では、走って最終減量を行い疲労が残ったため、今回は半身浴による“水抜き”で落とした。ただチケットやパンフレットにはバンタム級(118パウンド、53.52キロ)10回戦と表記されていて現場では多少の混乱があった。
「もともと119でしたよ。(5)3〈キロ)まで落ちて逆に水を飲んだ。(5)3.5(キロ=バンタム級リミット)になっても落ちるよ、文句を言うなよと」
天心自身はそう説明した。JBCも正式な契約は119パウンドとなっており、予備計量から両者共に119パウンドのつもりで来ており「問題はない」と判断した。
SNSやネットは“アンチ天心”からの批判で荒れているが、バンタム級のリミットの118パウンドと今回の119パウンド契約の違いの1パウンドは、わずか460グラム。亀田京之介(TMK)との前日計量の1回目で900グラムを体重超過して話題となった“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)とは違い、両者共にギリギリの減量を乗り越えて戦っているわけではない。天心は、計量当日朝に少し食事を取れたほど。 どこかの段階で変更があったのであれば、バンタム級10回戦ではなく119パウンド契約10回戦と表記しておくべきだったのだろうが、とりたてて騒ぐほどの問題ではない。
この試合は天心にとってはターゲットとする武居と比較される重要な“世界前哨戦”である。
「そこは意識していない。どれだけ通用するか。そこしか考えていない。可能性を全部ぶつける。越えられるのか、越えられないのか。飛び越えちゃうのかどうなるか自分でもわからない。それが楽しみなカード」
モロニーの公開練習では司会者が「判定なら天心、KOならモロニー」という予想をぶつけて「誰が言ってんだ?」と「ジャッジが公平に見ないってことか?」と“プチ論争”となった。改めて天心にその論争について聞くとこう本音を明かした。
「僕はKOも狙いたいが、こだわりを持つと固くなる。流れで戦い、倒す瞬間があれば倒す。倒すというより勝手に倒れている。(KOは)意識せず天心流の格闘技をやる」
ちなみにJBCが発表した当日のレフェリー、ジャッジ構成は、レフェリーが中村勝彦、ジャッジが染谷路明(共に日本)、メキン・スモン(タイ)、エドワルド リガス(フィリピン)と日本人に偏らないような構成になった。