
井上尚弥の力を借りて2028年ロス五輪で存続決定のボクシングで「金2個以上を獲る!」…異例のプロアマ合同合宿を計画
IOC(国際ボクシング委員会)総会が20日、ギリシャで行われ、存続が危ぶまれていたボクシング競技が2028年のロス五輪で実施されることが決定した。これを受けてアマチュアボクシングの日本ボクシング連盟が21日、都内で緊急会見を行い、ロス五輪での金2つ以上獲得の目標を果たすため、代表チームのプロアマ合同合宿を計画していることを明かした。連盟では、プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)にも参加を呼び掛ける考えだ。

採点基準の変化に対応する手段
モンスターに五輪モンスター作りへの協力を依頼する。
IOC総会で決議されたロス五輪でのボクシング競技存続の決定を受けて、ロンドン五輪代表でもある日連の強化担当のトップ、須佐勝明ハイパフォーマンスディレクターが、2028年ロス五輪の目標をこう掲げた。
「金メダル2個以上、男子3人、女子3人の五輪出場が目標です」
過去に五輪での金メダリストは3人。1964年の東京五輪バンタム級の桜井孝雄、2012年ロンドン五輪ミドル級の村田諒太、2021年東京五輪女子フェザー級の入江聖奈で、一大会で金メダル2個以上は、かなり高いハードルだが、須佐氏には強化の切り札があった。
「ワールドボクシングの採点がかなり変わりつつある。しっかりと情報収集をして、採点基準に沿ったボクシングをやらないといけない。どういったボクシングを確立するか、という中で、海外選手の招致や、これまでやったことのないプロアマ合同合宿を考えている」
過去にはプロ側の選手引き抜き問題などでプロアマの交流が断たれていたことがある。アマ側主催のプロアマ合同合宿が実施されたことはない。ただプロ側が、トップアマをスパーリングに呼んだり、2021年には「レジェンド」というイベントでプロアマのエキシビションマッチが行われるなど、“ドン”山根明氏を追放した内田貞信前会長の時代から徐々に雪解けムードはあった。
須佐氏がその狙いをこう明かす。
「これまでの採点基準はクオリティブローをしっかりと打ち、パンチが伸びればポイントが入っていた。だが、ワールドボクシングでは、より強いパンチを打つ場面を多くしないとポイントが取りにくく逆にがっつりとパンチをもらうと10-8という採点になることが目立っている。1、2ラウンドを取っても3ラウンド目で逆転が起きる。そのためには、しっかりとパンチを打つこととガードが重要。プロは長いラウンドをやるのでガードが上手いし、プロから学べる点は多い。お互いの刺激になれば」
IOCから組織のガバナンス不全を理由に除外されていたAIBAから、新しくワールドボクシングに世界的統括組織(IF)が変わり、参加国も増えたため、今回、ボクシング競技の存続が決定したわけだが、ボクシングのルール、採点基準なども様変わりした。日本は、昨年のパリ五輪以降にワールドボクシングに加盟してすでにワールドボクシング主催の国際大会にも参加してきたが、その中で感じた採点基準の違いが、ダメージブローが評価されるというプロのボクシングに近いものだった。昨年11月に英国で開催されたワールドボクシングカップのファイナルでパリ五輪71キロ級代表の岡澤セオン(大橋)が決勝で敗れたが、「パンチをもらわないタイプのセオンは、いつも僅差の試合になるが、3、4発被弾したことで10-8をつけられて負けた」(須佐氏)ことがショックだったという。