
なぜパ・リーグと相撲界の異色コラボが企画されたのか…京セラドーム大阪ではオリックスの古田島と人気力士の宇良がタッグ
プロ野球パ・リーグ6球団と日本相撲協会による異色のコラボが決まり、京セラドーム大阪では26日にオリックスの2年目のセットアッパー、古田島成龍投手(25)と、大相撲の宇良(32、木瀬部屋)が会見した。6月の交流戦期間中を中心に、ご当地力士6人が各球団の本拠地に登場し、さながら「六月場所」として、始球式などで盛り上げるもの。それぞれのファンを巻き込み、相乗効果での人気拡大を狙おうという異例の試みだ。
ご当地力士が各球団の本拠地に登場
大相撲界と野球界が異例のタッグだ。
これまでも横綱や人気力士が始球式を行っているが、ここまでガッツリと組んでシリーズ化されるのは初。パ・リーグは、1950年3月11日に最初の公式戦が始まっており、今年で75周年。一方、日本相撲協会は1925年12月28日に財団法人として設立され、今年の12月で100周年の大きな節目を迎えることもあり、競技の枠を超えたコラボが実現した。
オファーを出したのはパ・リーグ側。運営を担うパシフィックリーグマーケティング(PML)の担当者は「国民的スポーツのプロ野球と国技の大相撲が力を合わせて日本のスポーツをさらに盛り上げていければとの思いから企画しました。野球と相撲はファン層が重なるところもあるので、これを機に裾野が広がり、さらに両方のファンが拡大してくれれば」と大きな期待を寄せる。
2007年にPMLの立ち上げに執行役員として参加した元ソフトバンクの取締役で現在、桜美林大教授の小林至氏(56)も「歴史と伝統に裏打ちされた2つの団体が協力するのは初めて。どちらにとってもメリットがある」と評価した。
「プロスポーツは興行なので新鮮な話題を提供する必要がある。人々が余暇やエンタメに費やせる時間は1日4時間ほどしかなく、娯楽がひしめく中で新たな話題を提供するのは基本中の基本。でないと埋没してしまう」とも指摘した。
今回のコラボでは、それぞれのホームスタジアムに人気のご当地力士が来場。始球式はもちろん、大相撲にちなんだ演出や仕掛け、さらに開設したSNS特設サイトでも話題を発信する。早速、この日は、試合日程と来場予定の力士が公開された。交流戦の期間でリーグの枠を超えて盛り上げていこうという意図も感じられる。
相撲界は野球ファン、野球界は、スー女と呼ばれる熱烈な相撲ファンに興味をを抱いてもらい、互いに新しいファン層の拡大につなげたいとの狙いだ。
開催はさながら「六月場所」という風情だ。6月3日のオリックス―広島(京セラドーム大阪)にまずは小さな体から多彩な技を繰り出すことで大人気の宇良(大阪府出身)が登場。続いて12日の東北楽天―中日(楽天モバイルパーク宮城)に時疾風(宮城県出身)、13日のソフトバンク―DeNA(みずほペイペイドーム福岡)に正代(熊本県出身)、14日の千葉ロッテ―ヤクルト(ZOZOマリン)に「おにぎり君」の愛称で知られる隆の勝(千葉県出身)が来場。さらに15日の北海道日本ハム―広島(エスコンフィールド)に元公務員の一山本(北海道出身)と続き、最後の27日、埼玉西武―日本ハム(ベルーナドーム)が大栄翔(埼玉県出身)となっている。
この日、京セラドーム大阪では、ルーキーイヤーの昨季に初登板から22試合連続無失点の日本タイ記録を作り、50試合に登板、防御率0.79、チーム最多の24ホールドをマークしたオリックスのセットアッパー、古田島と東前頭5枚目で絶大な人気を誇る宇良が出席して会見が行われた。初顔合わせで、“立ち合い”は両者ともに緊張ムードが漂ったが、すぐにコラボ効果が現れた。
まずは宇良が「始球式は一度はやりたいと思っていたのでうれしい。球技は苦手でボールを投げられないんですが、ノーバウンドで届けられるように」と硬い表情で抱負を口に。これに対し古田島が「6球団を代表して来させてもらった。体の大きさでは負けるが、トーク力では負けないようにしたい」と返し場が和んだ。
さらに「力士の方は百獣の王というか、人間界で一番強い印象。強くて格好いい」と持ち上げた。