なぜオリックス山本由伸はソフトバンクとの天王山で完封勝利を飾れたか…マジック減らしを阻止して2ゲーム差
オリックスが17日、エース山本由伸(24)の快投で首位ソフトバンクを2-0で下し、ゲーム差を2に縮めた。本拠地・京セラドーム大阪での天王山初戦を託された山本は、ソフトバンク打線を4安打、2回以降は二塁を踏ませない圧巻のピッチングで今シーズン2度目の完封勝利。ハーラートップを独走する14勝目をあげてソフトバンクの連勝を6で止め、マジックが「9」から減ることを阻止した。ゲーム差は2で、残り試合数がソフトバンクよりも4試合少ないオリックスは負けられない戦いは続くが、逆転Vへカード3連勝を狙う。
9回の113球目に最速157キロをマーク
オリックスが2点をリードしたままフィナーレに近づいていた京セラドーム大阪が大きくどよめいた。
二死走者なしで迎えた最終回。山本が4番・柳田悠岐を変化球攻めで1-2と追い込んだ直後の113球目だった。これで決めてやると気合いが入りすぎたのか。真ん中低目へ外れる直球を投げた瞬間に、山本は場内に響くほど大きな叫び声を発していた。
「それでみんな笑っているのかなと思って、ちょっと不安になりました」
投げた本人は、どよめきの理由を勘違いしていた。
実は、ファンが注目したのは叫び声ではなかった。
場内に表示された球速はこの夜で最速の157km。身長178cm体重80kgとややスリムな体に搭載された底知れぬスタミナに驚きの声が上がったのである。
直後の114球目。外角低目に落とすフォークで柳田のバットに空を切らせ、ソフトバンク打線から奪った7個目の三振とともに今度は歓喜の声が場内にあふれ返った。ヒーローとなった山本がお立ち台で感謝の気持ちを伝えた。 「今シーズン、京セラでまだ完封ができていなかったので、すごく元気が出ました。絶対に勝つしかないと思っていたので、今日は気合い十分で臨みました」
気合が力みへと変わり初回にいきなりピンチを迎えた。
先頭の周東佑京を0-1から4球連続のボールで歩かせ、続く三森大貴へ投じた123kmのカーブも内角低目へ外れた直後に、捕手の若月健矢が早くもマウンドへ向かった。
三森は2球目、真ん中やや外よりの甘い154kmの直球を強振する。ライト前へ抜けそうな打球を一塁のT-岡田がダイビングキャッチし、無死一、三塁の大ピンチとなる場面を一死二塁で踏み止まらせたファインプレーが山本を鼓舞した。 3番・牧原大成の遊ゴロで周東が三塁へ進み、前夜の楽天戦で20号3ランを放っている柳田を迎えたピンチで、山本からは立ち上がりの不安定さは消え去っていた。
「とにかく落ち着いて、思い切り腕を振ることだけを考えていました」
内角への直球攻めで1-2と追い込んで迎えた4球目。またもや内角へうなりを上げる156kmの直球で、好調の主砲を空振り三振に斬った山本はマウンド上で雄叫びをあげた。球界を無双する豪腕が“らしさ”を完全に取り戻した証でもあった。
果たして2回以降は圧巻のピッチングが繰り広げられる。
許した4本のヒットはすべて単打。先頭の8番・柳町達に初安打をセンター前へ運ばれた3回は、続く甲斐拓也の送りバントに瞬時に反応。1-6-3の併殺に仕留めたが、山本は、二塁ベースの手前で、バウンドしかけた自分の送球を好捕してくれたショートの紅林弘太郎へ冗談まじりにこう伝えた。
「紅林が低目をカバーしてくれたので、紅林に珍しく感謝したいと思います」
終わってみれば与えた四死球も初回の周東だけで、その周東を歩かせた後は3ボールになった場面もゼロ。2回以降は二塁すら踏ませなかった。テンポのよさがバックの好守備をも引き出す。8回の先頭・柳町が放ったレフト前へ抜けそうな痛烈な打球は、宗佑磨のダイビングキャッチの前に三塁ゴロに変わった。
ソフトバンクの藤本博史監督は「完敗です」と白旗を上げた。