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東日本新人王のSライト級4回戦でスコーピオン金太郎(左)の“毒針ストレート”が石井龍虎(右)の顔面を捉えた(写真・山口裕朗)
東日本新人王のSライト級4回戦でスコーピオン金太郎(左)の“毒針ストレート”が石井龍虎(右)の顔面を捉えた(写真・山口裕朗)

え?!ボクシングで“毒針殺法”?!東日本新人王決定戦で逆転KO勝利のスコーピオン金太郎がMVPを獲得

プロボクシングの東日本新人王決勝戦が3日、後楽園ホールで11階級にわたって行われ、大会MVPには石井龍虎(17、渡嘉敷)に1回にダウンを取られるも3回2分54秒に逆転KO勝利したスーパーライト級のスコーピオン金太郎(本名・又吉淳哉、26、三谷大和S)が選ばれた。またウェルター級では“燃える男”輪島功一氏の孫である磯谷天心(21、輪島S)が松野晃汰(20、神奈川渥美)に4回53秒TKO負けを喫して、松野が敢闘賞。また技能賞はスーパーフライ級で判定勝利の五十嵐春輝(23、湘南龍拳)が獲得した。勝者は6日に決まる西軍代表と12月17日に後楽園で全日本新人王を争う。

1回にダウンを奪われる絶体絶命のピンチから逆転

 絶体絶命のピンチがドラマの始まりだった。1ラウンド残り30秒でいきなり奪われたダウン。スコーピオンは17歳の石井が思い切り振り回した左フックを浴びて両手、両ひざをキャンバスに着いた。
 だが、冷静だった。
「想定内だった。一瞬だけでダメージもなかった。驚かずに練習通り。自分のボクシングやっていればポイントは取り返せる」
 石井は評判のハードパンチャー。実は、スパーリングでダウンを奪われることを想定。わざと一度、倒れた状況から立ち上がって反撃するトレーニングを積んでいたという。
「新人はパニックになるんでね」
 世界戦を2度経験している元OPBF東洋太平洋、日本スーパ―フェザー級王者の三谷大和会長(51)は、ラウンド間にこう語りかけた。
「やり返そうと無理にいくな。左のタイミングがあっているから一緒に打ちなさい。キレはこっちが上なんで勝てる」
 2ラウンドだ。サウスポースタイルの遠い距離から、一瞬の隙をつき、左ストレートが炸裂。ダウンを奪い返す。
「まさにあれがサソリの毒針ですよ」
 三谷会長が、ほれ込んだスコーピオンのフィニッシュブロー。スピード、キレ、タイミング…すべてが揃った“毒針ストレート”である。
 スコーピオン自身も「あんないい角度、いいタイミングで入ったのは初めて。決まったと思った」と手応えを感じていた。
 初回に失ったポイントを取り返してイーブン。ここでも三谷会長は「深追いをするな」と念を押した。
 そして3ラウンド。右のジャブから左をヒットさせ、さらに「狙っていない。たまたま」と手を出した右のフックが、石井の出鼻をくじくように顔面をとらえた。“毒針ストレート”のダメージが残っていたのだろう。石井はヒザから崩れ落ちた。すぐさま立ち上がったが、ニュートラルコーナーでファイティングポーズを取れず、レフェリーが10カウントを数えた。
「ダウンもない綺麗なボクシングで終わりたかったが、ドラマができてよかった」
 元新日本キック所属のキックボクサー。3年前にスパーリングパートナーとして三谷Sジムを訪れた際に、「ここならチャンピオンになれる」と、ボクシングの魅力に取りつかれ転向を決意した。だが、三谷会長は「他団体の選手を取るようなことはできない」と最初は断った。スコーピオンが所属ジムと話をつけボクシングの道へと進むことになった。
 三谷Sジムでは、数年前から「ファンに覚えてもらいやすいように」と有望選手にはリングネームをつけている。
 三谷会長は、初めて練習でミットを受けたときに、その「見えなかった」左ストレートにゾッコンとなり、「まるでサソリの毒針のようだったから」と、直感的にスコーピオンという名が頭に浮かんだ。
「日本語と組み合わせた方がいいし、可愛い顔をしているので金太郎という名前が出てきた」と三谷会長が「冗談半部に」スコーピオン金太郎というリングネームを打診すると、偶然にも「もし子供が生まれたらたとえ女の子でも金太郎とつける気だった」と、ハムスターにまで金太郎と名づけていたスコーピオンは、そのリングネームを歓迎した。

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