阪神陽川が西武、楽天オコエが巨人など12人移籍「現役ドラフト」は成功だったのか…”モノ言う”評論家の里崎智也氏に見解を聞く
プロ野球の「現役ドラフト」が9日、オンラインで初めて開催され、1巡目で指名された12人の移籍が決まった。阪神の右の代打”切り札”で今季は打率.294を残していた陽川尚将内外野手(31)が西武、その阪神がかつてローテー入りしていたソフトバンクの大竹耕太郎投手(27)を指名、また楽天のオコエ瑠偉外野手(25)が巨人、巨人の戸根千明投手(29)は広島へ、横浜DeNAの細川成也外野手(24)と中日の笠原祥太郎投手(27)は“1対1トレード“という形での交換移籍となった。だが一方で球団によってリストアップ選手のレベルに差があったことや、2巡目のドラフトは希望球団が現れず実施されないなどの問題も残した。成功したチームと問題点を整理した。
阪神の岡田監督、巨人の原監督、楽天の石井監督は温情決断?
サプライズもあり、各チームが現役ドラフト用の“戦力外予備軍“をズラっと並べるという最悪の事態は回避された。
元千葉ロッテでユーチューブが人気の評論家、里崎智也氏も「この選手を出すのかという驚きもあったし、予想通り、使わない選手をリストアップした球団もあった。陽川を出した阪神の岡田監督、戸根を出した巨人の原監督、オコエを出した楽天の石井監督らは、初めての導入となった現役ドラフトの意図をリスペクトし形骸化させないために温情を見せたと思う。全体的に見て”まあまあ“という印象。最悪の事態は避けられたし、改善の余地はあるが、スタートしたことに意義がある」と評価した。
各球団が、年俸5000万円以下(一人は1億円未満までOK)、複数年契約を結んでいない、過去にFAしていない、育成契約ではない、などの条件をクリアした選手2人を事前にリストアップ。この日、その中から各球団が1位入札選手を議長に通知。入札人数の多い選手の所属球団が暫定1位の指名権を得て、指名された球団が2番目に選手を指名、今度は、その球団が3番目の指名権を得るといった様に順繰りに指名していく手順で進んだ。
今季の実績から言えば驚きは里崎氏が指摘した阪神の陽川だろう。
45試合に出場して打率.294、1本塁打、6打点の成績を残した。主に外野手として13試合に先発出場しているが、原口文仁と共に右の代打の”切り札”として重用され、代打では20打数8安打、打率4割の数字を残した。本塁打は1本に終わったがパンチ力も魅力。推定年俸は2200万円。今回移籍した12人の中で一番高い。
陽川自身も球団を通じて「現役ドラフトで移籍が決まったと連絡をいただいて凄く驚いたというのが率直な心境です」とコメントしている。
「その陽川を獲得できた西武が今回の成功チームの一番手では」と里崎氏。
「西武の三塁にはおかわり君がいるが、平沼や呉を使うなど固定できていない。森がFAで抜けて打線も強化しなければならなかった。陽川はレギュラーのチャンスがあるし、1年間、1軍に入れるんじゃないか。今季1軍登板のない松岡で陽川を獲得できたのは大成功だと思う。楽天の補強ポイントにも合致しているが、先に西武に陽川を獲得されていたので広島の正随に切り替えたのだと推測する。阪神も佐藤の三塁起用を決め、外野は近本に新外国人とドラフト1位の森下がいる。右打者としてはトレードで日ハムから渡辺も取った。新戦力は計算できないが、岡田監督は、陽川の出場機会が多くなればの温情でリストアップしたのだろう」
阪神にいるより出場チャンスが増える可能性がある。
陽川は、「球団の方からも言っていただきましたが、これは自分にとってチャンス」と気持ちを切り替えて虎ファンに感謝の思いを伝えた。
今回の現役ドラフトが、どういう順番で進んだのか、計24人の顔ぶれがどうだったのかもすべて非公開。関係者の話を総合すると、1番人気の選手は、阪神の陽川か、日ハムで貴重な中継ぎとして34試合に投げた古川侑利投手(27)だったようで、陽川を指名された阪神はソフトバンクの大竹、古川を指名された日ハムは、今季1軍登板のない西武の松岡洸希投手(22)を指名している。