今日、有馬記念…前王者エフフォーリアは復活ドラマを演出できるのか…5頭が前日オッズ10倍を切る“戦国レース”
中央競馬の2022年の総決算レースとなる「第67回有馬記念」(GⅠ)が今日25日、東京・中山競馬場の芝2500メートルコースで行われる。前日の単勝オッズでは、3歳で天皇賞・秋を制覇したイクイノックス(牡3、木村)が1番人気の2.9倍、春GⅠ2勝のタイトルホルダー(牡4、栗田)が2番人気の3.5倍、ジャパンカップを制覇した超新星ヴェラアズール(牡5、渡辺)が8.8倍で支持されるなど5頭の有力馬が一桁台のオッズを示す“戦国レース”。気になるのは昨年の覇者エフフォーリア(牡4、鹿戸)だ。2連敗した上半期から巻き返して連覇を果たすことができるのか。
今年序盤戦のスランプ原因はどこに?
あの輝きはどこへ消えてしまったのか。3歳春は皐月賞を制覇し、日本ダービーはハナ差2着。秋の天皇賞では、“3冠馬”コントレイルを完封し、さらに有馬記念もぶち抜いて年度代表馬に選ばれた。だが、今年に入ってスランプに陥った。4月の大阪杯は9着、6月の宝塚記念は6着といずれも1番人気に支持されながら期待を裏切った。連覇を狙う今回の有馬記念の前日オッズでは、5番人気の9.4倍と支持率を下げた。
スランプの原因はどこにあったのか。
おそらく様々な要因が複雑に絡んだものだろう。レース後の陣営の話を総合すると、大阪杯はゲート内で突進し、脳しんとうを起こしたような状態でスタートを切ったこと、宝塚記念は、暑さとこれまでに経験したことがないハイペースが影響したとみている。そこで、専門家の声を丁寧に拾ってみた。美浦のトラックマン(時計班)はフィジカル面の変化を指摘する。
「力が出せなくなったのは古馬になって、体のバランスが崩れたことでフォームに影響しているのではないか。背中の部分に筋肉がつきすぎ、体全体もマッチョになった。パーツ、パーツで見ると鍛えられて成長し、強くなっているが、それによって俊敏さや柔軟性がなくなり、推進力につながっていないのかもしれない。いいときに比べるとストライドが短くなっている。今回もまだ戻りきっていないように見えた」
確かに、他のスポーツ選手でも方向性を間違えたトレーニングをしたことで、余分な筋肉がつき、持ち味のしなやかさがなくなったケースもある。もしかすると、エフフォーリアもこのパターンにあてはまるのかもしれない。
春2戦の敗因として関西への輸送と指摘する声もある。確かに、エフフォーリアのキャリアの中で直前輸送という形でレースに臨んだのは、この2度だけ。ルーティンが変化したことで体内時計が狂ったり、気持ちの面で微妙な変化が生まれたりしても不思議はない。
特に阪神競馬場の出張馬房はコースから比較的近く、ファンファーレやゲートが開く音が伝わり、その影響を受ける馬が少なくないと聞いたことがある。さらに、馬房が幹線道路に面していることから夜間の通行量もそれなりにあり、精神的に落ち着かない面も否定できない。
気持ちの面を指摘したのは栗東のベテラン厩務員だ。
「直接タッチしていないので何とも言えないが、これまで担当した中で牝馬にはある日を境に急に気持ちが乗らなくなって、走るのを嫌がり、最後は馬場入りまで拒否するケースがあった。その点、牡馬はそこまでの馬は少なく、ましてやエフフォーリアのような一流の競走馬が突然、走らなくなるのは珍しい。ただ、故障でもないのに結果が出ないとなると、精神的な面があるのかもしれない。レースを全力で走ったかどうかは厩務員には息の入りですぐ分かるもの。もし楽を覚えたとしたら、ちょっとやっかいかもしれませんね」