なぜ亀田和毅は「井上尚弥に勝つ自信がある」と発言したのか…物議を呼んだ発言の根拠を説明
プロボクシングの元世界2階級制覇王者で、現WBA世界スーパーバンタム級2位の亀田和毅(31、TMK)が2月25日に大阪南港のATCホールで同級13位のルイス・カスティージョ(26、メキシコ)と56キロ契約の10回戦を行うことが4日、大阪西成区の同ジムで発表された。和毅はWBAの指名挑戦権を持つが、WBAとIBFの統一王者であるムロジョン・アフマダリエフ(28、ウズベキスタン)がマーロン・タパレス(30、フィリピン)と4月下旬にもIBFの指名試合を行うことが決まったため、世界前哨戦としてKO負けのないタフなメキシカンを選んだ。世界王座復帰を狙う和毅の最終ターゲットは、スーパーバンタム級へ転級するバンタム級の4団体王者、井上尚弥(29、大橋)だ。先日「勝つ自信がある」と発言してネットでは賛否が飛び交ったが、この日、その根拠を説明した。またセミファイナルでは、いとこの亀田京之介(24、ハラダ)が、井上と対戦経験のあるペッチバーンボーン・ゴーキャットジム(37、タイ)と対戦する。
「ボクシングは階級制のスポーツ。フレームの差で有利」
亀田和毅の最終ターゲットは“モンスター”井上尚弥である。
「まずは(自分が)チャンピオンになること。井上チャンピオンはまだ(バンタム級の)王座を返上していないし、いつ上がってくるかもわからないが、タイミングが一致すればね。俺がチャンプで向こうが挑戦者なのか、逆なのか、統一戦になるかわからない。まずは2月の試合に圧倒して勝つこと」
“モンスター”と同じ土俵に上がるための手順は承知している。
何も前WBO世界バンタム級王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)のように礼儀を欠いた挑発をしているわけではないが、先日、行われたジム開きの際に「勝つ自信がある」と発言したことが、ネット上では賛否を呼んだ。「どうやって勝つ気?」「力の差は歴然」などの批判の声も少なくなかった。
この日、和毅に、その「勝つ自信」の根拠をズバリと問うた。
「井上チャンピオンはライトフライ級から上がってきた選手。オレは最初からバンタム級。ボクシングは階級制のスポーツで、バンタム級からスーパーバンタム級、スーパーバンタム級からフェザー級と上がる、この1階級が大きい。これは選手にしかわからない。オレもスーパーバンタム級に上げた時に(相手の)パワー、体の強さを感じた。バンタム級ではバンバン倒せていたのにスーパーバンタムでは倒せない。井上チャンプはどうなるのかわからないが身長が違う。(井上は)165(センチ)。スーパーバンタム級では、170(センチ)が最低ライン。リーチ、ひとつ拳が届かないということが出てくる。そういうところがあるので(井上戦が)実現すれば、こっちが有利かなと」
和毅はプロキャリアのスタートがバンタム級で身長は171センチある。対する井上は、ライトフライ級がスタートで身長は165センチ。井上自身も、スーパーバンタム級に上げる“2キロの壁“について「スーパーバンタム級は倒しにいって倒せるような領域ではない。身長170、170前半の選手もゴロゴロいるし、僕が体力的には劣っている。今の倒し方や組み立てを取っ払って考え直さないとダメ。戦い方を変えていく必要がある」と語っていた。
ただ米スポーツ専門チャンネル「ESPN」は「井上が称賛されるパワーを新たな階級に持ち込めばスーパーバンタム級も一掃するに違いない」と報じているし、筆者も、スーパーバンタム級でもKOを連発すると見ているが、相手に耐久性が生まれることも事実。確かに未知の領域ではある。
和毅自身、バンタム級からの転級の際に「階級が上がるにつれ、相手のスピードは落ちるが、パワーとか、体格、身長が変わってくる。そういうところで苦戦した」という。
バンタム級では33戦31勝19KO2敗の戦績でKO率は58%だったが、スーパーバンタム級に転級後は、9戦8勝2KO1敗で、右手の故障の影響もあって、KO率は22%とガクンと下がった。
「パウンド・フォー・パウンドのカネロでさえ、一つ階級を上げてビボルに負けた。ビポルは、そう飛び抜けて強い選手じゃないが、リーチ差にやられた」
スーパーミドル級の4団体統一王者のサウル“カネロ“アルバレス(メキシコ)も、昨年5月に1階級上のWBA世界ライトヘビー級スーパー王者のディミトリー・ビボル(ロシア)に挑戦して0-3で判定負けを喫している。この試合もフレームの大きさの違いが響いた。和毅も、その利点を生かせば、井上とも勝負になると読んでいるのだ。