給料払わず19人も退団の“めちゃくちゃ”…JFLが5300万円の債務を抱えて再建の見通し立たない「FC神楽しまね」に退会を通告
日本フットボールリーグ(JFL)は23日に東京都内で開催した臨時理事会で、島根県松江市を拠点とするFC神楽しまねに対して、3月第2週に開幕する今シーズンへの参戦を認めない措置を承認した。理事会後にオンライン対応した加藤桂三理事長は、深刻な資金不足から経営難に陥っている神楽しまねの今後へ「基本的には退会となる、という考え方です」と明言した。給与の未払いも生じているチームからは、実信憲明監督に加えて16人もの選手が退団。存続の危機に直面している。
2021年の時点で累積赤字は1億円
開幕まで2カ月を切った段階で、今シーズンのJFLを構成する16クラブのひとつ、神楽しまねの不参加が決まった。オンライン対応した加藤理事長は「基本的には退会となる、という考え方です」と明言。さらに全会一致での承認だったと続けた。
「理事から『どうにかできないものか』という意見が出たかと言えば、まったくありませんでした。残念だけれどもやむなし、という判断だったのではないかと」
島根県松江市を本拠地する神楽しまねの前身は、1968年に創設された松江RMクラブ。中国サッカーリーグに昇格して2年目の2011シーズンに松江シティFCに改め、2019シーズンからはアマチュアリーグの最高峰で実質的な“J4”となるJFLへ昇格。2021シーズンには5位に躍進し、昨シーズンからは現在のクラブ名称に変更していた。
クラブの収入源はスポンサーと子どもたちを対象とするスクール。しかし、遠征などの活動が全国規模となったJFLを戦う過程で、もともと苦しかった資金繰りがさらに悪化。そこへコロナ禍が追い打ちをかけ、累積赤字は2021年で約1億円に膨らんだ。
迎えた昨年6月。クラブの運営法人は、コーチングスタッフや選手たちに対して給与の支払いが遅れると通達する。最終的に6月分は満額が支払われたものの、7月分は一部だけで、8月分以降は無給状態のまま12位で終えた昨シーズンを戦った。
加えて、毎年7月末を期限とするJFL年会費1000万円も未納。これに一般債権と給与の遅配分などの労働債権を加えた総額は約5300万円に到達。JFL側は今シーズンへの参加条件として、一連の未払い金を今月20日までに精算するように通達した。
しかし、加藤理事長は「一切実行されなかった」と舞台裏を明かした。
「運営法人には現時点で、支払いをするための資金がありません。加えて、一時的に支払うための借り入れもできなかったと思われます。今年の資金繰りに関する考え方は示していただきましたが、まずは未払い金が精算されて初めて新シーズンのスタートラインにつける。しかし、仮に支払いができたとしても不安定要素はまだまだありました」
JFLでは2011シーズンの終了後に、群馬県高崎市を本拠地としていたアルテ高崎が資金難を理由にクラブの移管を要望。しかし、移管先の候補となった団体との交渉が不調に終わった結果、高崎側は同年限りでの活動終了と解散を選択した。