なぜJ開幕戦の広島対札幌戦で勝敗を左右する誤審が起きたのか…再試合は行われず試合はスコアレスドローで成立
日本サッカー協会(JFA)の扇谷健司審判委員長(52)が22日に緊急ブリーフィングを開き、0-0で引き分けた18日のJ1リーグ開幕戦、サンフレッチェ広島-北海道コンサドーレ札幌でゴールを認めるべき場面で誤審があったと公表した。広島MF川村拓夢(23)のシュートを札幌GK菅野孝憲(38)が防いだ後半29分の場面で、ボールがゴールラインを越えていたと認めた。ただ再試合は行われず、試合は成立する。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)がいるなかで、なぜ勝敗を左右する誤審が起きたのか。
オンラインで行われた扇谷委員長によるメディアブリーフィングは、肝心の件名が明記されない異例の状況で、前日の午後10時前に急きょ開催が告知されていた。
慌ただしさが伝わってくるなかで扇谷委員長が切り出したのは、今シーズンの開幕戦が行われた18日の段階から物議を醸していた広島-札幌における判定だった。
「結論から述べさせていただきますと、われわれ審判委員会としては(広島の)得点を認めるべき、ゴールインにすべき事象であったと結論づけました」
前日21日に札幌へ電話で、広島へは扇谷委員長自らが直接足を運び、誤審に至った経緯や理由を説明するとともに謝罪した場面は後半29分に訪れた。
広島が獲得した左コーナーキックを、ニアサイドでDF佐々木翔(33)が頭ですらす。ファーサイドへ飛び込んできた川村が完璧なタイミングでヘディングシュートを見舞うも、それまでファインセーブを連発していた菅野が必死に左足でかき出した。
しかし、ライブ配信していたDAZN(ダ・ゾーン)の映像では、ボールがゴールラインをぎりぎりで割っているように見えた。シュートを放った勢いで札幌ゴールに飛び込んだ川村をはじめとする広島の選手たちも、手をあげながらゴールをアピールした。
しかし、御厨貴文主審(38)はそのまま試合を続行させた。VARの介入を受けて試合を中断させたのは約10秒後。直後から交信が続けられたが、約90秒後に広島ボールで試合は再開された。ボールがゴールラインを越えていない、とする御厨主審の判定は変わらなかった。
しかし、実際にはボールはゴールラインを越えていた。この時点でホームの広島、アウェイの札幌ともに無得点だった一戦は、そのままスコアレスドローに終わった。試合の結果そのものを大きく左右したかもしれない誤審は、なぜ起こってしまったのか。
「ひとつはVAR が決断できなかったことがあります。もうひとつは、VARは映像をどのように扱うのか、というテクニックがあります。そこが少し欠けていたと考えています」
2つの理由をあげた扇谷委員長は、さらにこう続けた。
「サッカーの判定において明確さと透明性がさらに求められているなかで、今回の審判員が下した判定は、われわれとしてはあってはならないものだと思っています」
扇谷委員長がまず言及した「決断」とは何なのか。
今回の判定はPKやオフサイド、ハンドなどのファウルと同じく、ゴールかノーゴールかのファクトを判断する。ゆえにVARの運用規定で、ピッチ脇に置かれたモニターを介して主審が映像を確認するオン・フィールド・レビュー(OFR)の対象にはならない。
つまりVARが映像を介して事実を認定するオンリーレビューの案件であり、扇谷委員長も「それを主審に伝えることしかできない」とこう続ける。
「多くの方々があの映像を見たときに『入っている』と思われているし、私もそう思っています。今回はボールとゴールポストの間にしっかり緑の色が見える。要は芝生の色がしっかりと見えているので、そうした場合にはVARがしっかりと決断して、VARのオンリーレビューとして『得点を認めてください』と主審に伝えるべきだったと思っています」