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大阪マラソンで西山和弥が初マラソン日本最高記録となる2時間6分45秒で日本人トップの6位でゴール(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
大阪マラソンで西山和弥が初マラソン日本最高記録となる2時間6分45秒で日本人トップの6位でゴール(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

なぜ大阪で西山和弥の初マラソン日本最高記録を含む6分台ランナーが3人も生まれたのか…好記録連発の背景にカーボン厚底シューズの普及と箱根ライバル…パリ五輪には厳しい現実

 「大阪マラソン2023」が26日、大阪府庁前発、大阪城公園着の42.195キロコースで行われ、男子は西山和弥(24、トヨタ自動車)が初マラソン日本最高記録となる2時間6分45秒の好タイムで日本人トップの6位に入り、西山と同学年で同じく初マラソンの池田耀平(24、Kao)も2時間6分53秒で日本人2位の7位に入り、共にパリ五輪代表を決めるMGCの出場権を獲得した。さらに大塚祥平(28、九電工)が2時間6分57秒で続き、日本人選手7人が2時間7分台でフィニッシュ。日本マラソン界にとっては大盛況といえるレースになった。

 瀬古リーダー「パリ五輪へ光明が見えた」

 

 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「初マラソンの2人(西山、池田)が走ってくれて、夢を感じましたね。昨年の大会で星岳選手が、初マラソン日本最高記録(2時間7分31秒)を出したことで、他の選手も自信になったはず。彼のタイムが1つの目標になったんじゃないかな。パリ五輪へ光明が見えてきました」と記者会見で声を弾ませた。
 2月5日の別府大分マラソンでも好タイムが続出した。26歳の市山翼(小森コーポレーション)が2時間7分44秒で日本人トップの3位に食い込むと、22歳の横田俊吾(青学大)が2時間7分47秒の日本学生新記録を樹立。日本人4選手が7分台をマークしたのだ。
 2016年まで2時間8分未満のタイムで走破した日本人選手は歴代で13人しかいなかった。それが2時間6~7分台を軽々と出すなど、この数年で日本マラソン界は大幅にレベルアップしている。
 昨年のこの大会では帝京大出身の星岳(24、コニカミノルタ)が2時間7分31秒の初マラソン日本最高記録を樹立するなど、若手選手の活躍が目立っているが、どんな背景があるのだろうか。

 まずはシューズの進化が大きい。2017年にナイキがカーボンプレート搭載の厚底シューズ(以下、カーボン厚底シューズ)を一般発売すると、一気に高速化。エリウド・キプチョゲ(ケニア)が世界記録を2度も更新しただけでなく、非公認レースで2時間切りを果たしたのだ。
 ナイキ以外のメーカーもカーボン厚底シューズを続々と発売。この数年間でマラソン界は〝シューズ革命〟が起きている。ただし海外勢のトップは大半がプロ選手で、スポーツメーカーと契約しているケースが多い。そのため契約メーカー以外のシューズを着用するのが難しかった。一方、日本の実業団ランナーや学生ランナーはスポーツメーカーと〝縛り〟の強い契約をしている選手は少ない。自分にフィットするメーカーのシューズを履ける環境があったことで、他国の選手よりも最新ギアをうまく活用してきた。それがタイムにも表れている。
 イメージしやすいところでいうと箱根駅伝も高速化が顕著だ。カーボン厚底シューズ登場前のコースレコードは青学大が2015年に打ち立てた10時間49分27秒(※現在と一部コースが異なり約40m短い)。現在はというと、2022年に青学大が樹立した10時間43分42秒が大会記録になる。また今年の箱根駅伝は9校が大学最高タイムで走破した。総合優勝を果たした駒大は10時間57分47秒(20年)から10時間47分11秒、同2位の中大は10時間55分44秒(22年)から10時間48分53秒と大幅短縮している。

 

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