侍ジャパンが準決勝進出を決めた5試合で見せた3つのポジティブ要素…マイアミでメキシコorプエルトリコに勝つためのカギとなる
WBCの準々決勝の日本対イタリアが16日、東京ドームで行われ、侍ジャパンが9-3でピアザ監督率いるイタリアを下して準決勝進出を決めた。
エンゼルスの大谷翔平(28)が「3番・投手兼DH」で出場、3回に一死一塁からまさかのセーフティーバントでチャンスを広げると4番に入ったレッドソックスの吉田正尚(29)の内野ゴロの間に先制点を奪い、巨人の岡本和真(26)の3ランで4点を先行した。岡本は2安打5打点の大活躍で、お立ち台に指名された。注目の準決勝は日本時間21日に米国マイアミで行われ、メキシコープエルトリコの勝者が対戦相手となる。
プライドより勝利優先のセーフティ―バント
ドジャース時代に野茂英雄氏とバッテリーを組みデータを駆使した“頭脳派”で知られるピアザ監督は迷うことなく大胆なシフトディフェンスを仕掛けてきた。1回無死一、二塁で3番の大谷を打席に迎えると、ロイヤルズのレギュラーショートのニッキー・ロペスをセカンドベースの右に寄せ、一、二塁間に3人を配置した。大谷は2球目のツーシームを捉え、ライナー性の打球はセンターへ抜けかけた。だが、本来なら、そこにいないはずのロペスが横っ飛び。その打球をグラブに収めた。4番に入った吉田、5番に下がったヤクルトの村上宗隆も凡退。嫌なムードがドームを支配した。
だが、大谷は、その守備シフトを逆手に取った。
3回。一死一塁で打席が回ってくると、なんと、その初球をセーフティーバント。エンゼルスの“マブダチ”の三塁のデビッド・フレッチャーがショートの定位置付近まで動き。ほぼガラ空きの三塁の定位置に向かって強いゴロを転がしたのだ。イタリア守備陣は唖然。投手のジョセフ・ラソーサは、なんとか追いついたが、転倒しながら一塁へ投げることになり、送球が大きくそれて、一死一、三塁とチャンスを広げたのである。
もちろんサインではなく自己判断。
「あの場面に関してはヒッティングするプライドはなかった。日本代表チームの勝利より優先するプライドはなかった」
栗山監督も「翔平らしさが出るのはああいうとき。投げるとか打つとかは別にして、“この試合は絶対に勝ちにいくんだ”と野球小僧になりきったときに、彼の素晴らしさが出てくる」と説明した。
2013年のWBCで戦略コーチを務めた現在新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏は。今季からメジャーでは禁止となる守備シフトの“功罪”と、その裏をかいた大谷の“柔らか頭脳”を高く評価した。
「守備シフトは、打球方向データによって確立論的にヒットを減らす戦略だが、同時に打者にプレッシャーをかけることになる。“シフトなど関係なく打ってやる”と力ませて打ち損じを誘うわけだ。だが、大谷は、そこで視野を広げ、柔軟な発想を持てた。彼はメジャーでも裏をかくセーフティーバントを何度か仕掛けているが、冷静に膠着状態を打破する最善の策を選択した」
続く吉田は、守備シフトに引っ掛かりセンターへ抜けるゴロをまたショートに止められたが、その間に1点を先取。さらに村上が四球でつなぎ、岡本が、片手になりながらも大会1号をレフトへ運ぶ3ランで4-0とリードを奪った。
実は岡本は2回にサインを見誤るミスを犯していた。一死一塁で、骨折した右手の小指にテーピングを巻いて先発出場した西武の源田壮亮の打席で、走者の岡本は、ボール1からの2球目にスタートを切ったが、打者の源田は、打つそぶりもみせず、岡本は二塁でタッチアウト。
橋上氏は、「源田はサインを見逃す選手ではない。岡本の単独スチールはあり得ないしベンチの反応を見ているとエンドランの勘違いだと思う」と指摘した。だが。そのミスをバットで倍以上にして取り返した。
試合後に、お立ち台で巨人でも定番の「最高です」を6連発して満員のドームのファンを沸かせたが、ミスもあり、多くを語りたくはなかったのかもしれない。