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WBCでの世界一奪回を狙う大谷翔平はイチローの意思を受け継いでいる(写真は2022年7月・AP/アフロ)
WBCでの世界一奪回を狙う大谷翔平はイチローの意思を受け継いでいる(写真は2022年7月・AP/アフロ)

大谷翔平がイチローから継承する“世界一”の意志…「WBCを野球界の未来のためにもっといい大会にするには勝つことが大事」

 侍ジャパンは日本時間の今日22日、米国マイアミのローンデポ・パークで米国との決勝に挑む。チームを牽引するのは「3番DH」で出場予定のエンゼルスの大谷翔平(28)。大谷には第1回、第2回大会の優勝の立役者だった現在マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー(49)から継承された意志がある。世界一奪回へ。大谷とイチローの野球界の未来へとつなぐ物語に迫った。

 WBCの存在意義を高めるために

「印象としては韓国戦(09年決勝)のイメージがどうしても強い。僕自身が一番野球を楽しい時期にそういう試合を見せてもらって、いつか自分がここでプレーできたら面白いだろうなと一つの夢として持った」

 今年1月に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の記者会見。大谷は、WBCの原風景をそう口にした。韓国戦とはもちろん、2009年の第2回大会でイチローが延長10回に決勝打を放った決勝戦のことだが、その夢を叶えた大谷は今回、表現する側に回り、何を伝えようとしているのか。
 そこをたどると、イチローの意志の継承という、明確な軸が浮かび上がってくる。イチローは、2006年と2009年のWBCで日本を世界一に導いた。しかしながら、あの時点でWBCを世界一を決めるような大会に昇華できたかどうか。それは、後に続く選手に託すことになったが、それなりに満足しているはず。安心して任せられる選手が現れたのだから。
 
 そもそもイチローが第1回のWBC参加を決めたころ、否定的な意見のほうが多かった。
「ワールドシリーズ以外に世界一を決める大会なんてない」
「しょせん、エキシビションの域を出ない」

 各球団も選手を送り出すことに消極的。それはいまも変わらず、米国代表は特に、エース格の出場が制限されている。なにより、ファンもどう受け止めるべきか戸惑った。今回、東京ドームで行われた日本の試合はすべて売り切れだったが、第1回大会の初戦(中国戦)の観客は、わずか1万5869人。その程度のスタートだったのである。
 もっともそこはイチローも覚悟の上。「最初から価値ある大会にするのは無理でしょ? 歴史がないんだから」。

 傍観し、大会の方向性を見極めてから、例えば2回目から出場する選択肢もあったはず。ところが、早い段階で自ら道を開拓する側に回った。
「1回目がなかったら、2回目もない。でも、歴史ってそうやってつくられるものでしょ? 積み重ねというか。まずやってみないと、どこがいいのか悪いのか、分からない部分もあるんじゃないですか」

 3月開催は負担が大きい、との声にはピシャリ。
「何のリスクもなしに、そんなことはできないんだから、どこかにどうしてもリスクは生まれるわけで、不自由なく、というのは無理ですよ」

 勝つことで存在価値を高めるーーその思いを胸に秘め第1回大会で優勝すると、第2回大会は、宮崎キャンプからファンを熱狂させた。後進に道を譲った第3回と4回はともに日本が準決勝で敗れ、やや人気も停滞したが、今回、メジャーで二刀流を確立させた大谷が参戦すると、人々を狂喜させ、より多くのファンを巻き込んだ。

 

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