なぜ阪神の延長12回サヨナラ劇が生まれたのか…岡田監督によって計算されていたシナリオと数々の采配“布石”とは?
阪神が1日、京セラドーム大阪で横浜DeNAと対戦し延長12回に6-5でサヨナラ勝利した。代打・糸原健斗(30)のライト前ヒットを皮切りに二死から満塁のチャンスを作り近本光司(28)が左中間にプロ初となるサヨナラヒットを放った。また12回を無失点に抑えたドラフト6位の富田蓮(21、三菱自動車岡崎)がプロ初登板初勝利。阪神は開幕2連勝を飾った。サヨナラ劇の裏には岡田彰布監督(65)が打った計算づくの数々の布石があった。
「こんなん1年間やっとったら持たんで、カラダ」
近本で始まり近本で終わった。
5-5で迎えた延長12回二死満塁。マウンド上はメジャー移籍をあきらめ“生涯”横浜DeNAを決めた守護神の山崎である。初球は148キロのストレートを低めに決められ「手が出なかった」という。カウント2-2と追い込まれた近本は、冷静にイメージを膨らませた。
「ボール球は振らない。基本センター中心にフォーク(ツーシーム)なら一、二塁間」
“ライン”と表現するスイング軌道と打球方向を頭に描いていた。
まだ開幕2戦目で打撃フォームが固まっていないため、「強い打球、引っ張りたい」の欲を抑えたという。
148キロのストレートだった。逆らわず弾き返した左中間への打球が近本の「超えてくれ」の思いを乗せて深々と超えていく。3万6000人強で埋まった虎ファン全員が歓声と共に立ち上がった。ホーム用の手袋がひとつしかなく、歓喜のウォーターシャワーに濡れることを嫌った近本は、荒っぽい祝福から走って逃げた。ベンチ前で岡田監督と抱擁。
「最高です。富田がつないでくれたし、糸原さん、あと誰やったかな…(笑)。糸さんのライト前に感動して、そこから小幡と(坂本)誠志郎さん。よかったです」
お立ち台でプロ初のサヨナラヒットの喜びを嚙みしめた。
4時間26分の長い戦いを終えた岡田監督は、笑って取材スペースに現れた。そして本音。
「ああ、しんど…開幕っていうのは、こうなるんやろな。こんなん1年間やっとったら持たんで、カラダ」
サヨナラ劇は、まるで高校野球のように12回二死から始まった。
岡田監督は3人目の捕手、長坂を除く最後の野手となる糸原を代打に送った。糸原は、山崎のウイニングショットであるツーシームを叩き、一、二塁間を破るヒットで出塁した。続く小幡が粘って四球で歩く。「四球もヒットも一緒」と、岡田監督が口を酸っぱく言っている「無形の兵器」。
そして途中出場の坂本も三遊間を破るヒットでつなぎ、二死満塁のサヨナラ舞台を作りあげた。。
「最後は2死走者なしからだから。最後は糸原1人。よく残したなあと。もう12回までいく流れで考えていたんで。あの2アウトから、あきらめずに塁に出たことが最後、いい形につながった」と岡田監督。
左の切り札の糸原が、残っていたのには、実は、ある伏線があった。