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中日の若き4番打者である石川の「怠慢走塁」と阪神のノイジーの“絶品”補殺が明暗を分けた(資料写真・黒田史夫)
中日の若き4番打者である石川の「怠慢走塁」と阪神のノイジーの“絶品”補殺が明暗を分けた(資料写真・黒田史夫)

中日と阪神の明暗を分けた石川の“怠慢走塁”とノイジーの“絶品イチロー級”補殺…その背景にある首位虎と最下位竜の“違い”とは?

 中日が18日、名古屋のバンテリンドームで行われた阪神戦に1-4で敗れて5連敗、一方の阪神は7連勝で貯金を2桁の10に乗せた。両チームの明暗を分けることになったのが8回二死一、二塁に起きた珍事だ。中日は村松開人(22)が左翼線にヒットを打ったが、打球をさばいた阪神のシェルドン・ノイジー(28)が超好返球で一塁走者を三塁で補殺。二塁走者の石川昂弥(21)がホームベース手前でスピードを緩めるという怠慢走塁をしていたため、ホームインより一塁走者のアウトが早いという「タイムプレー」が適用され得点が認められなかったものだ。石川の「怠慢走塁」が、ヤフーのトレンドワード入りしたが、首位の阪神と最下位の中日のチームに浸透させている野球が如実に表れる象徴プレーとなった。

 次打者の溝脇の指示ミスも重なる

 

「え?なんで?」
 バンテリンドームが騒然となった。
 3点を追う8回に中日は二死から石川、細川が連打。阪神3番手の浜地を攻め、一、二塁の反撃機を作った。続くルーキーの村松はファウルで粘りながら151キロのストレートをうまく逆方向のレフト線に運んだ。二塁走者の石川はホームへ。一塁走者の細川は三塁を狙ったが、打球がフェンスにぶつかる前にさばいたノイジーは三塁へ驚愕のクイックスロー。ワンバウンドの好返球がちょうど滑り込んできた細川とタイミングが合い、タッチアウトとなった。
「反撃機はストップしたけど、2点差にはなったか…」と、ドラファンが、タメ息半分、最終回への期待半分の気持ちでいたところにショッキングな判定が下った。
 細川が補殺された時、まだ石川はホームベースを踏んでいなかったのだ。余裕で生還できると思ったのか、ホームのかなり前でスピードを緩めていた。中日の得点成立のためには第3アウトより先にホームインしている必要があったが、球審は、石川のホームインよりも三塁の第3アウトが早かったと判断。いわゆる「タイムプレー」を適用して得点を認めなかった。
 立浪監督は、わざわざ球審の近くまで歩み寄り、リクエストを要求したが、判定は覆らなかった。ベンチに戻る際には、最前列にある柵を右手でポンと叩いた。やりきれない思いでいたのだろう。
 今の中日に3点差をひっくり返す力はなく、9回は阪神の守護神岩崎の前に4人で攻撃が終わりゲームセット。なんとも後味の悪い5連敗となった。
 怠慢走塁で反撃機を台無しにした石川は、試合後のベンチでコーチから懇々と説教を受けていた。
 スポーツ各紙の報道によると、立浪監督は、試合後、「ああいうことはあるので、ホームを踏むまでは全力で走っておかないといけない。ネクストにいる打者が、“来い来い”という無難な指示しか出していなかったと思うので、そこは反省点」と、石川の「怠慢走塁」と、もうひとつのミスを指摘したという。
 実は、代打の準備でネクストバッターズサークルにいた溝脇もまた的確な指示を怠っていた。
 「早く戻って来い!」のジェスチャーをするでもなく、ただ右手を上げたままだった。ハイタッチをしようとしたか、それとも「ホームはOK」の指示だったのか。いずれにしろ、その所作が石川からすれば「生還は大丈夫」の合図に見えたのかもしれない。
 こういうケースを想定して名門校では必ず走者心得として教える野球の鉄則がある。
「二死から複数走者がいる際には、前の走者は最後まで全力で走れ!」のセオリーだ。溝脇の指示ミスもあったが、その鉄則を忘れた石川の怠慢走塁がすべてだろう。昨年、左ヒザを手術する大ケガを負った石川の足はまだ100%ではない。だが、スピードを緩めた行為には、同情の余地はない。各紙の報道によると、阪神の岡田監督は「一生懸命走らなあかんいうことやろなあ」と自滅してくれた敵チームの怠慢走塁を評したという。

 

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