「機能していない中日ベンチと緊張感のなさを象徴する事件」なぜ立浪竜のエンドラン「サイン伝達ミス」三振ゲッツーが起きたのか…反撃機を潰して悪夢の7連敗
中日が21日、東京ドームで行われた巨人戦に2-5で敗れ、4カード連続の負け越しで泥沼の7連敗、ついに借金は14に膨らんだ。頼りのWBC戦士の高橋宏斗が自己最短の4回3失点でKOされると、最下位チームを象徴する“事件”が1点を追う7回に起きた。無死一塁の反撃機にカウント1-2からエンドランを仕掛けたが、巨人バッテリーにピッチドアウトされ最悪の三振ゲッツー。通常考えられないカウントでの作戦だったが、ベンチが間違ってサインを出したという。専門家からは、「チームの緊張感の無さを象徴する事件」という声が出ている。
行われなかったサインの「Wチェック」
東京ドームに詰めかけた竜党が凍り付いた、
1点を追う7回だ。マウンドにはまだ1軍昇格して3試合目の左腕の中川。ブルペンに弱点を持つ巨人にとっても不安が残るイニングだった。先頭の代打の鵜飼が四球を選び、打順はトップの岡林に返った。
バントか、あるいは強行か。立浪監督は強硬策を取った。事件が起きたのはカウント1-2と追い込まれてからの4球目だった。
なんと足のない鵜飼がスタート。エンドランを仕掛けたのだ。巨人バッテリーは、動きを読んでいて、外角へピッチドアウト。岡林はなんとかバットに当てようと試みたが、バットは届かず、二塁で鵜飼は楽々アウトとなり、最悪の三振ゲッツーで反撃機を潰してしまったのである。
なぜストライクを投げてくる確率が低い、カウント1-2からエンドランなど仕掛けたのか。
スポーツ各紙の報道によると、試合後に立浪監督は、この場面について、実直に、「エンドランというカウントでもなかったし、うちのサインミスでああいう形になってしまった。ただキャッチャーも外しにかかっていたので、サインも含めて、我々も反省してやらないといけない。これはこっちの責任。動かすつもりはなかった?そうです」と、ベンチのサインの伝達ミスであったことを認めた。
鵜飼と岡林の2人が同時にサインを見間違えたことはありえず、三塁コーチャーズボックスからサインを出す大西コーチが間違ってエンドランのサインを示す体の一部を触ったと考えられる。大西コーチの単純なミスか、その大西コーチにサインを伝達した立浪監督がサインを間違ったのか、あるいは、立浪監督からのサインを大西コーチが間違って受け取ったのか、真相まではわからないが、巨人、楽天、西武などで作戦コーチを務めた現在BCリーグの新潟アルビレックス監督である橋上秀樹氏は、こんな指摘をした。
「おそらく大西コーチが間違ってサインを出したのでしょうが、これは、ごくまれに起きることなんです。そのミスを防ぐために、通常は、ベンチ内にいるヘッドコーチか他のコーチが、立浪監督から大西コーチに出されたサインと、実際、大西コーチが出したサインが合っているかどうかをダブルチェックするんです。もし大西コーチが間違ってサインを出していれば、そのダブルチェックしたコーチが、タイムを要求して、サインをやり直すんです。今の中日のベンチは、そういうダブルチェックさえ機能していなかったということ。首脳陣がこんなことをしていれば指導への説得力がなくなる。チームの緊張感の無さを象徴する事件でしょう」
なんらかの拍子に知らないうちに間違ってサインを示す箇所を触ってしまうという伝達ミスはプロ野球の世界でも時折起こりうる話だ。
阪神の岡田監督がオリックスの監督時代に守備の際、ベンチから捕手に「内角を攻めろ」というサインを送っていた。当時のオリックスの捕手が、内角を攻める配球ができなかったために、そのサインを作っていた。だが、ちょうど夏場で、グリーンスタジアム神戸のベンチに虫が飛び交っていた。岡田監督は、サインを出すタイミングで顔のあたりに飛んできた、その虫を手で追い払った。その時たまたま「内角を攻めろ」というサインの箇所を触ってしまっていたようで、捕手が「内角を攻める」サインと勘違いして、内角を要求。手痛い一発を打たれたことがあるという。とうてい内角を攻めるようなカウントではなかったそうだが、当時の捕手に考える能力がなかったため、タイムをとって確認する作業も行っていなかった。
今回のケースでも鵜飼、岡林のどちらかが、エンドランのサインを疑い、大西コーチにサインの確認をするべきだったのか。