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日本ダービーで2番人気だったスキルヴィングが入線直後に倒れた。ルメール騎手が心配そうに駆け寄るが、急性心不全で天国へ旅立った(写真・東京スポーツ/アフロ)
日本ダービーで2番人気だったスキルヴィングが入線直後に倒れた。ルメール騎手が心配そうに駆け寄るが、急性心不全で天国へ旅立った(写真・東京スポーツ/アフロ)

なぜ日本ダービーで2番人気のスキルヴィングがレース直後に急性心不全で死亡するショッキングな悲劇が起こったのか?

 第90回日本ダービー(GⅠ、東京芝2400メートル)が28日、東京競馬場で行われ、4番人気のタスティエーラ(牡3、堀)が優勝、短期免許のダミアン・レーン騎手は69年ぶりにテン乗り制覇の偉業を達成した。その一方でクリストフ・ルメール騎手が手綱を取った青葉賞の覇者で2番人気のスキルヴィング(牡3、木村)が17着入線後に1コーナー付近で倒れ、その後、馬運車で運ばれたが、急性心不全で死亡する悲劇が起こった。ショッキングな出来事にルメール騎手は、「とても悲しい」とコメントを残した。

「とても悲しい」とルメール騎手も沈痛

 

 異変は最後の直線で起こった。
 残り450メートル。外からジリジリと追い上げてきたスキルヴィングが、さあ、ここからアクセル全開という形になった場面で、ずるずると下がっていく。この馬向きのスローの展開となり、道中は中団待機。第3コーナーあたりからギアを入れて青葉賞で破ったハーツコンチェルトの外に並んで抜群の手応えで4コーナーを回っていただけにまさかの光景だ。
 骨折か、心房細動か。軽症であってほしいとファンが願う中、最後は力なく、落馬で競走中止となったドゥラエレーデを除く17頭の“最下位”で何とか完走した。しかし、本当の悪夢は、その直後に待っていた。
 ゴール入線後、ルメール騎手がスタンド前で下馬すると、スキルヴィングはそれを待っていたかのように1コーナー手前までふらふらと歩き、内ラチ沿いに倒れた。横たわったまま微動だにしない。ルメール騎手が心配そうに体をなでたが、反応することはなく、そのまま馬運車へ。その後、JRAから急性心不全での死亡が発表された。
 ルメール騎手は、「直線で全然反応しなかった。ゴール後はふらふらだったので早めに止めたが…。とても楽しみにしていた馬だけに、とても悲しい。残念です」と、沈痛な面持ちでコメントした。
 管理する木村哲也調教師は「馬は一生懸命に走り、頑張ってくれました」と言葉を絞り出し「期待の大きな馬で、ダービーだけでなく、その先もと思っていたのでとても残念です。胸が苦しいですが、天国で幸せにすごしてくれることを心から願っています」と哀悼の思いを伝えた。
 ネット上でも「スキルヴィング」がトレンド入り。「夢を見させてくれてありがとう」「青葉賞のジンクスを今度こそと思っていましたが、つらいです」「苦しかったのにゴールするまで頑張ってルメール騎手が下馬するまで耐えたんだ」「どうか安らかに」と悼む声が相次いだ。
 なぜ悲劇は起こったのか。
 キタサンブラック産馬のスキルヴィングは、デビュー戦こそ、2着に終わったが、そこから3連勝でダービーに挑んだ。5戦すべて東京コース。ダービーを見据え、ダービーと同じ芝2400メートルのゆりかもめ賞(2月5日)、青葉賞(4月29日)を連勝し、「青葉賞馬はダービーを勝てない」のジンクス打破を目指して野心的なローテーションで臨んだ。追い切りも順調に消化し、パドック、返し馬の雰囲気、動きにも、決してなんらかの異常が発生しているようにも見えず、状態が悪かったわけではなかった。
 競走馬が急性心不全で命を落とすケースは珍しいわけではない。
 軽種馬育成調教センターのホームページによると、心不全は心臓が機能不全に陥り、心筋の収縮力が減退ないし消失し、全身性の血液循環障害を伴って心臓に還流する血液が完全に心室内から拍出できないために起こる、とある。つまり、心不全とは心臓が正常に機能しなくなり、その収縮が弱まったり、なくなってしまったりすることにより全身に血液を送るポンプの役割が果たせなくなり、血液の循環障害を起こしてしまうことをいう。
 調教中に騎乗していた馬が心不全に陥った経験があるジョッキーによると「急性心不全を発症すると突然、全身の力がフッと抜け、乗り手の方は対処のしようがない」とのこと。

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