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アマ13冠の堤駿斗がプロ3戦目でOPBF東洋太平洋フェザー級の王座を3-0判定で獲得した。日本最速記録だ。
アマ13冠の堤駿斗がプロ3戦目でOPBF東洋太平洋フェザー級の王座を3-0判定で獲得した。日本最速記録だ。

「大谷翔平流の卵が…」“アマ最高傑作”の堤駿斗がプロ3戦目の最速記録で東洋王者になれた理由とは?

 プロボクシングのOPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦が31日、後楽園ホールで行われ、アマ13冠で同級2位の堤駿斗(23、志成)が世界挑戦経験のある同級3位のジョー・サンティシマ(26、フィリピン)に3-0判定で完勝しプロ3戦目で同王座を獲得した。元世界3階級制覇王者の田中恒成(畑中)、元OPBF東洋太平洋、元WBOアジア・パシフィック同級王者の清水聡(大橋)の4戦目を抜き、国内最速記録を更新。途中左拳を痛めKO決着とはならなかったが、映像配信「ABEMA」と専属のスポンサー契約を結んだ期待に応え、“ネクストモンスター”の片鱗を見せた。

 「徹底的に精神を痛めつけてやろうと」

 

 これがプロ3戦目のボクサーなのか。
 息も絶え絶えになってもおかしくない最終ラウンド。12ラウンドを休むことなく、右へ左へ激しく動き続けた堤が、足を止めて殴り合いを挑み倒しにいった。右のフックにフィリピン人はよろけ、アッパーの3連発に動きが完全に止まった。819人と発表された後楽園ホールのファンのボルテージは最高潮。
「倒せ!」
 アマ最高傑作とうたわれた男のKOシーンを求めて盛り上がった。
「スタンディングでも止めてくれたらと殴り続けたんですが…まだまだですね」
 3年前には、3階級制覇王者で現WBO世界スーパーフェザー級王者のエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)の持つタイトルに挑戦経験もあるサンティシマは、したたかでクリンチを上手く使われ、KO決着とはならなかった。それでも、ほぼ被弾はなく、一人が120―108とフルマークをつける完勝で、日本最速記録で東洋太平洋のベルトを手にした。
「ダウンをとりたかった。でもテーマは、まず勝つ、明確な差をつけて勝つということ。せっかく回ってきたチャンスを1回目でつかむことができて、ほっとしています」
 満足と不満足の複雑な気持ちが交錯した。最高の笑顔というわけにはいかなかったが、映像配信の「ABEMA」と、異例の専属スポンサー契約を結び、“ネクストモンスター”と呼ばれる期待には、結果と共に、スピード、距離感、カウンターのタイミングと精度、頭脳、スタミナという王者に必要な素質を存分に見せつけて一発回答した。
 
 実は最初のKOチャンスは3ラウンドにあった。左右の強烈なボディが食い込み、タフなサンティシマは、腰を折って、あからさまに嫌がり下がった。試合後に「ボディは利いた」とダメージを認めるほどだったが、あえて堤はフィニッシュにいかなかった。
「普通の人なら(フィニッシュに)いく。でも、自分は、やらしいボクサーなんで(笑)。あそこはニヤニヤしてあえていかなった。一発を狙っているかもしれないし、どんどん削っていってやろう。徹底的に精神的に痛めつけてやろうと」。
 憎らしいほど冷静だった。
 今回の試合の最大のミッションは、インパクトを残すことではなく、確実にベルトを獲ること。そして「自分のペースを守るボクシング」を貫くこと。だから練りに練った戦術を徹底した。
「サイドに動き、相手のプレッシャーをいなして、パンチをもらわず、左のジャブと返しのパンチで削っていく」(佐々木トレーナー)という作戦。
 サンティシマは、どんどん前に出てくるが、堤は、左右のステップワークで翻弄し、おもしろいように左ジャブをヒットさせた。しかも、その左ジャブは、ピンポイントで、サンティシマの左目を狙った。
「腫れさせたかった」
 その狙いは「1発が怖いので、片目を潰して、その距離感奪う」というもの。みるみるフィリピン人の左目下の部分がたんこぶのように膨れあがっていく。左目が塞がれば、堤の狙い通りにパンチの精度が落ちる。堤は、何度もパンチを空振りさせ、スタミナを消耗させていく。そして「余裕はない。パンチも死んできた」と認めると、反復練習を積んできた右アッパーから左ボディのコンビネーションブローを何度となくヒットさせた。
 6、7ラウンドの中盤に左拳を痛め、左ジャブの強度が弱まり、左フックも打てなくなったのが、誤算だったが、11、12ラウンドは、痛みをこらえて勝負した。
 KOはできなかったが、タイトル奪取という最大のミッションは果たした。
  ベルトを腰に巻いても「まだ実感はない」が本音。
 佐々木トレーナーは「なんでもできることを示した」と合格点を与えた。

 

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