なぜ藤浪晋太郎は“激変”したのか…吉田正尚のレ軍相手に6試合連続無失点…最悪14点台だった防御率が直近10試合で2.45に改善
アスレチックスの藤浪晋太郎(29)が9日(日本時間10日)、敵地ボストンでのレッドソックス戦の8回一死二塁に救援登板、2人を続けて右飛に打ち取り、6試合連続無失点で前半戦を終えた。開幕から先発で4連敗し防御率が14点台と“炎上”が続き、中継ぎに配置転換されてからも制球力を改善できなかった藤浪だが、ここ10試合の防御率は2.45と安定してきた。前半戦の成績は31試合で5勝7敗2ホールド、防御率9・00。なぜ藤浪は“激変”したのか。
進化した「メンタル」「フォーム」「適応」の3つのポイント
もはや藤浪はセットアッパーとして全米でもトップクラスの安定度を誇る。“激変”した藤浪が、WBC戦士の吉田正尚が「5番・DH」でスタメン出場した敵地フェンウェイパークに仁王立ちした。
3-3で迎えた8回だ。先頭の吉田がレフトのグリーンモンスターを越える勝ち越しの10号ソロを放った。さらに一死二塁となり、もう1点もやれない場面で藤浪に出番が回ってきた。先頭のクリスチャン・アローヨに対して、159キロのストレートでストライクを取ると、2球目も158キロのストレートで押し込んだ。コースは、ほぼ真ん中だったが、アローヨはライトへ打球を高く打ち上げ、定位置より前でキャッチするライトフライ。
続く張育成には、ボールゾーンに落とすスプリットで空振りを奪い、2球目も続けたスプリットは見送られたが、3球目に160キロのストレートをアウトローに投げ込み、張が高く打ち上げた打球は、またライトフライ。わずか5球で藤浪は役目を果たした。試合には負けたがこれで6試合連続の無失点。前日の同カードでも最速164キロをマークして1回を1安打1奪三振の無失点に抑えていた。
開幕から先発で4連敗して、防御率はなんと14.40にまで落ち込んだ。中継ぎに配置転換されても、回跨ぎでの“炎上”が続いた。落ち着き始めたのは、メジャー登板15試合目となる5月27日のアストロズ戦から。ここ10試合での防御率は2.45で、チームの勝ち頭となる5勝をマークしている。
なぜ藤浪は“激変”したのか。
明らかに改善したのは制球とストレートの威力だ。
ここ10試合で与えた四死球はわずかに2つ。逆に奪三振は11イニングを投げて13個もある。ストレートを軸にした配球に変えて、そのストレートは160キロを連発。最速は164キロをマークしている。
現役時代に阪神、ダイエー(ソフトバンク)、ヤクルトで先発、抑えで活躍した評論家の池田親興氏は、「メンタル」「フォーム」「適応」の3つが進化し、リンクしていることが“激変”の理由だと分析した。
「まず一番の理由は、31試合もメジャーのマウンドで投げることができたことで、実戦の中でアジャストできたことではないか。マウンドの硬さや傾斜、気候、ボール問題などに適応できてきたと思う。激変というより彼が本来持つポテンシャルがようやく表に出たということ。2つ目の理由は、メンタルだと思う。チームが弱いことに加えて、藤浪をフル回転させたいという球団方針があり、結果にとらわれることなく投げることができている。“抜けたらどうしよう”、“ストライクが入らなかったらどうしよう”というネガティブな感情がなくなり、思い切りにつながっている。だからストレートを軸にした組み立てにしてスプリットがボールになってカウント負けするという悪循環もなくなっている。楽に投げているというか、これだけ気持ちよく全力投球のできている藤浪の姿は阪神時代にも見たことがなかった」