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  • 「ちょっと失礼」41秒シャドーで“煙幕”を張ったWBC&WBO王者フルトンに井上尚弥を支える父の真吾トレーナーが3つの万全対策…「王者に劣っているところは何もない」
井上尚弥が挑戦するWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトンが公開練習で煙幕を張った(写真・山口裕朗)
井上尚弥が挑戦するWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトンが公開練習で煙幕を張った(写真・山口裕朗)

「ちょっと失礼」41秒シャドーで“煙幕”を張ったWBC&WBO王者フルトンに井上尚弥を支える父の真吾トレーナーが3つの万全対策…「王者に劣っているところは何もない」

 プロボクシングの元バンタム級4団体統一王者の井上尚弥(30、大橋)が7月25日に有明アリーナで挑戦するWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(28、米国)が14日、横浜の大橋ジムで練習を公開した。約41秒のシャドーと数発のパンチングボール打ちを見せただけの煙幕を張り、視察した井上尚弥の父親で専属トレーナーの井上真吾氏(51)を「公開練習でこれじゃあ、え?という感じ。ちょっと失礼」とあきれさせた。フルトンは「自信がなければ日本に来ない」と豪語。ポイントアウトで判定防衛する戦略をほのめかしているが、真吾トレーナーは万全の3つのフルトン対策を用意していることを明かした。

 「公開練習でこれじゃあ…え?だよね」

 

 ここまでやるか…フルトンは“煙幕”を張った。
 報道陣と約10分ほどの簡単な問答を笑顔を交えながら紳士的に切り上げるとバンテージも巻かずにリングに入りシャドーボクシングを41秒だけ披露した。しかも、本来右構えのフルトンがサウスポースタイルで動くという念の入りようである。
 その後、パンチングボールをみつけて打ったが、「(高さの設定が)低いんだよ」と文句をつけて数発だけでやめてしまった。 
 滞在時間は、約15分ほど。大橋会長、井上真吾トレーナー、井上尚弥の実弟でWBA世界バンタム級王者の井上拓真、従弟の井上浩樹らの“チーム井上”が勢ぞろいして視察したが、木を鼻でくくったような公開練習にただあきれるしかなかった。
「ここまでとは思っていなかった。流すにしても、もうちょっと普通にやると思っていた。公開練習でこれじゃあ…え?だよね。ちょっと失礼かなと感じるよね。性格の悪さは感じなかったけど」
 スポーツマンシップを厳守することで知られる真吾トレーナーもあきれ顔。
 今後、井上尚弥の公開練習が予定されているが、「もし相手が視察にきていれば、うちは、もっと短い時間で終わらそうかな?」とのジョークまで飛び出した。
「警戒?ある程度、映像が取れると、こっちがイメージできるからね」
 横浜市内のホテルに泊まっているフルトンは、当初、7月25日の試合まで大橋ジムで調整を行う予定でいたが、「井上のジムではやりたくない」と拒否して、別のジムでの練習に切り替えている。この日も午前中に、別のジムで、動いてから公式行事のためだけに大橋ジムに移動してきた。
 初来日どころかプロになって初の海外試合。
 本人は「普段と変わらない気持ちでやる。アマ時代も海外でも戦っているので気にならない」というが、どこかで井上陣営の目を意識しているのだろう。大橋ジムでは、階級を上げた井上が厳しい減量苦から解放されたためジム内には冷房が入っている。一度は、フェザー級に上げてブランドン・フィゲロア(米国)との再戦が内定していたフルトンは、不安視される減量については「問題ない。いい感じで落ちている」と強調したが、別のジムでは、汗を出すために暖房をかけて動いているそうで、そういう環境の違いを嫌ったのかもしれない。
 超時短の公開練習だったが、真吾トレーナーは「体格は靴の分を差し引いて1m69よりも大きいと感じた。映像との違いもよくわかんないけど、基本は、しっかりとできている正統派」と分析した。
 フルトンはインタビューの中で井上を「素晴らしいファイターだ」と称え、「どこが素晴らしいか?」と突っ込まれると「タイミング」と一言だけ返した。
「パワーではないのか?」
 そう聞くと「パワーはもちろんある。それは彼の武器であって、それ以上に、それをどう使うかのタイミングがいい」と回答した。
 フルトンは井上が2019年、2022年とノニト・ドネア(フィリピン)と戦った2試合、昨年12月に4団体を統一したWBO世界バンタム級王者、ポール・バトラー(英国)戦の3試合しか映像をチェックしていないようだが、井上の長所をよく分析している。
 だからこそ、頭で描いているのは、そのタイミングを作らせないように、できる限り危険な距離や接触を回避しての徹底したポイントアウトでのベルト防衛だ。

 

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