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延長12回引き分けに終わった首位攻防戦で阪神の岡田監督と広島の新井監督がそれぞれ収穫を得た(写真・黒田史夫)
延長12回引き分けに終わった首位攻防戦で阪神の岡田監督と広島の新井監督がそれぞれ収穫を得た(写真・黒田史夫)

12回熱戦ドローの首位攻防戦に見えた岡田阪神の収穫と新井カープの仕掛け…裏をかいた「ピッチドアウト」に秘められた心理戦

 阪神と広島の首位攻防戦が29日、甲子園球場で行われ、両チームとも譲らず延長12回の熱戦の末2-2の引き分けに終わった。ゲーム差はないものの、勝率でわずか.004上回って首位を守った阪神は、先発の青柳昇洋(29)が7回4安打7奪三振1失点で本来の投球を取り戻したのが収穫。対する広島は、新井貴浩監督(46)が、機動力やピッチドアウトなどの裏をかく野球を仕掛けて阪神のリズムを狂わせた。

 青柳のゴロアウト量産に見えた手ごたえ

 

 4時間56分の真夏の首位攻防戦は12回を戦い終えて決着がつかなかった。2-2。両軍合わせて15人の投手をつぎ込んでの緊迫感のある熱戦だった。
 岡田監督は白い歯を見せていた。
「あの1球だけやったな」
 スポーツ各紙の報道によると、指揮官は、2-1で迎えた8回一死一塁から3番手の岩貞が小園に不用意に入った初球のストレートを左中間へ同点タイムリー二塁打にされたシーンだけを悔やんだ。
 無死一塁から加治屋が、代打・磯村のバントを二塁で封殺。小園、野間、秋山と左が続くところで岡田監督が小刻みに岩貞のカードを切って逃げ切れなかったことに対しては、「負けたんちゃうのに何を言うてんの。勝ち負けなんか今言う必要ない」と気にも留めていなかったという。
 収穫は先発青柳の好投だった。
 プロ入り初めて小園を二塁でスタメン起用してまで、森下以外、左を8人並べてきた広島打線を相手に7回を4安打1失点。三振を7つ奪い、青柳の好調のバロメーターであるゴロアウトは10個を数えた。
 インサイドのストレートに力があり、キレのある変化球を左打者のアウトコース低めにコントロールできていた。今季調子の上がらなかった青柳は、中途半端なボールが多く、低めのボールの出し入れがほとんどできていなかった。だが、2軍での再調整後、7月11日の横浜DeNA戦で復帰。3試合目にして、ようやく昨年の最多勝&最高防御率&最高勝利の投手3冠王らしいピッチング内容を見せた。岡田監督が、今季初めてコンビを組ませた坂本との息もあっていた。
「だいぶ戻ってきた。コントロールも良かったしスピードも出とった」
 勝負の9月に向けて、なくてもならないエースの復活に光明が見えたことが、「勝ちゲームを勝ちきれなかった」岡田監督のイライラを解消させたのだろう。
 6回にはサトテルが逆風を切り裂いて右中間に勝ち越しの12号ソロ。外角のカットボールを捉えた27日の巨人戦以来の一発だった。今の佐藤が打球を飛ばすことができる“ツボ”に来た。ただ3回二死二、三塁から森下のカーブを見送って三振。同点に追いつかれた8回にも無死一塁から島内のチェンジアップにタイミングを外されてスイングアウト。相変わらず打席内容は、安定していないが、意外性の一発を秘めているのが佐藤の魅力。首脳陣にサトテルは外せないと思わせることはできた。
 一方で対する広島は“したたかな野球”を仕掛けた。監督経験は、もちろんのこと野球への見識の深さでは、まだ岡田監督には、かなわないが、伝統的なカープ野球の“頭脳プレー”を見せて見事に裏をかいてみせた。

 

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