なぜ阪神はヤクルトとの5時間16分の激闘を制して9連勝を飾れたのか…岡田監督が唱える「普通にやるだけの野球」とは?
阪神が12日、京セラドーム大阪でのヤクルト戦に4-3でサヨナラ勝利した。3-3で迎えた延長12回無死満塁で佐藤輝明(24)が中犠飛を決め、今季両リーグ最長となる5時間16分の激闘にピリオドを打った。阪神は今季2度目の9連勝。2位の広島が中日に敗れたためゲーム差は7に広がり、6カード連続の勝ち越し決定で、いよいよ“アレ”に向けての独走態勢に入った。
サトテルがヤクルトの“守護神”田口からサヨナラ中犠飛
時刻は午後11時を回っていた。
鳴り物応援はなく、虎党の声のみが京セラドームに響く。
3-3で迎えた延長12回。ヤクルトの“守護神”田口から、この回先頭の中野が、左中間二塁打で出塁した。岡田監督は、「これはいけるなという感じになった」という。
森下が四球でつなぎ、大山がライト前ヒット。外野を前に出していたヤクルトの守備隊形を考慮して藤本三塁コーチは右手を回すことを自重した。無死満塁のサヨナラ機に打席には佐藤が入る。
「みんなでつないでもらったんで後は決めるだけという心でいきました」
ボールが2つ先行してからの3球目だった。
ヤクルトの中村はミットを外角低めに構えていたが、ストレートが真ん中高めに甘く入ってきた。佐藤は軽く振ったように見えた。打球は高々とセンターへ。佐藤は「犠牲フライで十分だったので最高の結果」と、その打球を見上げながら“確信歩き”。背走した塩見が、目測を誤って、体の膝の前あたりで捕球して落球するという“おまけ”までついたが、三塁走者の中野がタッチアップからサヨナラのホームを駆け抜けて、ネクストで待機していた原口と抱き合い、一塁ベース上付近で、控えめに両手でガッツポーズをしていた佐藤に、坂本やノイジーが走り寄り、小野寺から祝福のウォーターシャワーが浴びせかけられた。
「今まで何回かチャンスあったんですけど無理だったんで今日は良かったです」
お立ち台に指名された佐藤は、それほど興奮した様子でもなく、静かにサヨナラを決めた犠牲フライを振り返った。
この打席に入る時点で打率は.222。この日は、1安打、2三振、2四球だった。
岡田監督は、サトテルに関しては、いまや我慢を通り超して“達観の境地”で起用している。右腕なら5番、左腕なら6番。試合前の打撃練習の状態と、結果は決してイコールではなく、絶不調かと思えば、突然、とんでもないアーチを描いたりする。打点「55」は、セ・リーグのランキング7位。基本的に打てる“ツボ”は、外角の半速球しかないが、相手バッテリーの必要以上の警戒が、四球や失投につながるため、岡田監督は、そのサトテルの“ポテンシャル”を信じているのだ。
岡田監督は、その瞬間、息をふーと大きく吐き出した。
「長かったなと思っていますよ」
それが第一声。
アナウンサーに「心地よい疲れでは?」と突っ込まれ、「いやいや、心地はよくないですね」と笑わずに返した。その表情には疲労が色濃く残っていた。
「(試合の勝敗)ポイントは、どこかわからないですね。序盤はもう、あんまり覚えてないですね」とも言ったが、延長12回の攻撃時には、「もう負けはないんで、別に引き分けでもいいし楽なもん。勝ちにつながってね」という気持ちでベンチから見守っていたという。