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カシメロと小國の一戦はまさかの負傷ドロー(写真・山口裕朗)
カシメロと小國の一戦はまさかの負傷ドロー(写真・山口裕朗)

なぜカシメロは不甲斐ない負傷ドローに終わり井上尚弥戦のアピールに失敗したのか…「井上には楽勝」と豪語も大橋会長は「もうちょっと練習しないとダメ」と苦言

 プロボクシングのスーパーバンタム級10回戦が12日、東京江東区の有明アリーナで元3階級制覇王者のジョンリエル・カシメロ(34、フィリピン)と元IBF世界同級王者の小國以載(35、角海老宝石)の間で争われ、4ラウンドに偶然のバッティングにより小國が流血し、試合続行不可能と判断されて負傷引き分けに終わった。カシメロはスタミナ切れに加えて、小國の大健闘でボディまで効かされる不甲斐ない内容で、WBC&WBO世界同級王者の井上尚弥(30、大橋)との世界戦実現のアピールに失敗。本人は「井上戦は楽勝だ」と豪語したが、リングサイドで観戦した大橋秀行会長(58)も「今日の出来では勝てない」と手厳しかった。プロモーターの元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪氏(32)も課題が残ったことを認め再戦の可能性を示唆した。

 「小國があんなもんなら井上には楽勝だ」

 

 ゴングと同時にカシメロはど迫力の先制攻撃を仕掛けた。
 豪快な右のフックからロープにつめて左右のフックを振り回し、ボディブローと続けざまにパンチを浴びせかけた。一発KOを狙ったかのように何発も思い切り右を打った。7000人に設定された有明アリーナは、8割以上のお客さんに埋まり、フィリピンの応援団が多くいて、異常な盛り上がりを見せる。
「早く終わらせたかったが、多くのお客さんが来てくれたので、エンターテインメントにしたかったんだ。5、6回でのKOを狙っていた」
 ガードを固めて防戦一方となった小國は「びっくりした」という。
「前に行って打ち合うと決めていたけど、どうしても下がってしまった。(阿部)トレーナーの『前へ、前へ』という声が聞こえた。下がったら負け。勝負どころだと思った」
 もうカシメロのKO勝利は時間の問題かのように思われたが、元3階級制覇王者の攻撃が止まると阿部トレーナーの檄を合図に小國がワンツーで反撃。身長差を生かした打ち下しの右がヒットして逆にカシメロが下がる場面もあった。
 第2ラウンドも最初の20秒ほどは、カシメロが倒しに来た。だが、すぐに巻いたゼンマイが伸びきったかのようにペースダウン。そこに小國が左のボディアッパー、右のボディストレートをビシバシと決めると、明らかにカシメロの顔色が変わり、動きが止まったのである。
 実は、小國は、元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(志成)を仮想カシメロに見立てて、スパーリングを行ってきたが、「途中からは対策されるが、一発はボディが決まる」とアドバイスをもらっていたという。
「中のボディが思ったより当たった。嫌がっているのがわかった」
 さらに小國がワンツーで追うとクリンチに逃げるシーンも。
「パンチはあったが、栗原(慶太)の方があったと思った。来るのがわかっていたのでガクっと効くものはなかった」
 ただ終了間際にカシメロのフルスイングの右に顔面をとらえられ「あれは効いた」という。しかしKOショットとはならず、大方の予想を裏切る大接戦に今度は場内から「小國コール」が沸き起こった。コーナーに帰ったカシメロは、大きく口を開け肩で息をしていた。
 3ラウンドも逆に小國がプレスをかけた。
「ジャブが怖くて打てなかった」と試合後に語っていたが、左ジャブに、アクションの少ない槍のようなワンツー、特に右ストレートが効果的で、カシメロは、完全に空回り。ジャッジの2人が小國を支持していた。
 しかし予期せぬ結末が4ラウンドに待っていた。偶然のバッティングで小國も右の額の上あたりがざっくりと裂け、おびただしい出血が止まらなくなった。血が右目に入り視界が確保できなくなったため、福地レフェリーが試合続行不可能と判断。負傷引き分けとなった。カシメロはまったくの無表情。小國はタオルを頭に巻いてレフェリーに手を上げられた。

 

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