「無気力試合では?」「いや苦渋の戦略」パリ五輪予選なでしこJの戦いに賛否…なぜ池田監督は追加点を狙わせなかったのか?
女子サッカーのパリ五輪アジア2次予選の第2節が29日に行われ、グループCのなでしこジャパンはウズベキスタンのブニョドコル・スタジアムで同国女子代表に2-0で勝利し、インド女子代表との初戦に続く連勝で首位をキープした。前半15分までに2ゴールを奪ったなでしこだが、その後は相手陣内でのパス回しに終始。75分間で放ったシュートも0本で終えた異例の試合展開に、SNSでは「無気力試合では?」「いやレギュレーションを踏まえた苦渋の戦略」などの賛否両論が飛び交った。なぜ池田太監督(53)は追加点を狙わせなかったのか。
ピッチ上で奇妙な光景が
ピッチ上で奇妙な光景が繰り広げられた。
なでしこがボールを完全に支配。ボールポゼッション率は90%近くに達した。それでも無理には攻め込まない。ウズベキスタン陣内でのパス回しに終始し、両サイドをえぐった場面でも選択されたのはクロスではなくバックパスだった。
試合はなでしこが序盤に立て続けにゴールを奪った。前半10分にDF遠藤純(23、エンジェル・シティ)の左CKを、ファーサイドでDF南萌華(24、ローマ)が頭で押し込んで先制。5分後にはペナルティーエリア内で遠藤の縦パスを受けたFW千葉玲海菜(24、千葉)が振り向きざまに左足を一閃。相手をかすめた一撃がゴールネットを揺らした。
しかし、千葉の追加点がこの試合における最後のシュートとなった。
大量7ゴールを奪って26日のインド戦に零封勝ちしたなでしこだったが、ホームのウズベキスタンを相手にゴールラッシュの再現はならなかった。というよりも、あえて攻め込まなかった。報道によれば、最終ラインを中心にしたセーフティーなパス回しで残る75分間をプレーさせた意図を、なでしこを率いる池田監督はこう語っている。
「勝ち点3をしっかり取ることにフォーカスした。それほど多くのゴールを必要としなかったので、2点を取った後はボールを維持するゲームとなった」
しかし、SNSには試合中からなでしこへの賛否両論が飛び交った。例えばJFAなでしこサッカーの公式X(旧ツイッター)には、こんな批判がポストされた。
「こんなにつまらないサッカー初めて見た…」
「無気力試合では?」
「くだらねぇ八百長見せてくれて有難う」
「こんな試合で子ども達に夢を与えられますか?」
「サッカーを侮辱するならなでしこジャパンは廃止しろ」
「パス練習を見せられて何が楽しいの?」
池田監督のコメントからも、ベンチの指示で追加点を狙わせなかったことがわかる。なぜ批判を覚悟で攻撃を半ば“放棄”したのか。そこにはアジアに2枠しか与えられていないパリ五輪切符を獲得するまでの、複雑なレギュレーションが関係している。
オーストラリアと中国、ウズベキスタンで同時開催されているアジア2次予選には4カ国ずつ12チームが参加。AからCまでの各グループの1位と、2位の3カ国のうち成績最上位の計4カ国が来年2月24日と28日に開催される同最終予選に進出する。
ただ、最終予選は4カ国によるリーグ戦ではなく、2つのグループに分かれてそれぞれホーム&アウェイで戦い、勝者がアジア代表となる。しかも、組み合わせは2位で進んでくる国が、2次予選のどのグループから出てくるかによって変わってくる。
例えばなでしこが所属するグループCを1位突破した国の対戦相手は、グループAの2位が最終予選に進出した場合はグループAの1位と、グループBの2位ならその国と、グループCの2位ならばグループBの1位とそれぞれ対戦する形になる。