阪神甲子園の戦いに「DH無し、浜風、土のグラウンド、虎党球場ジャック」の“地の利”4点セット…もつれたら怖い第7戦先発不在問題
日本シリーズは1勝1敗で今日31日から決戦の舞台を甲子園に移して3試合が行われる。第3戦の先発に阪神は今季10勝5敗、防御率2.39の伊藤将司(27)、オリックスは今季6勝0敗の東晃平(23)を立てる。甲子園ではDHが無く、特有の浜風、土のグラウンド、そして球場ジャックが予想される大応援など阪神に有利な条件が揃っているが、その先にもし第7戦までもつれこんだ際の先発候補が不在という問題を抱える。6戦までに詰ませるのが理想。先の先まで読む“智将”岡田彰布監督(65)は甲子園での3試合をどう戦うのか。
先発は伊藤将vs東
岡田監督の言葉を借りれば「1勝1敗は想定内」。第1戦は沢村賞投手の山本由伸をKOして7点を奪い、8-0勝利。第2戦は、一転、先発抜擢した西勇が背信の4失点で0-8敗戦。
「えらい極端な2試合になったな」と岡田監督も苦笑いを浮かべていたという。
まだ勢いという名の不可思議な勝利の女神は、どちらの味方をしようかと関西の空をさまよっている。阪神にとって甲子園の3試合はシリーズの趨勢が決まる最大の山場。
岡田監督は、その初戦の先発に伊藤将を指名した。6月15日の甲子園での交流戦のオリックス戦に先発して7回を投げて4安打1失点。この試合は2-1で迎えた9回に当時のストッパーだった湯浅が、頓宮に同点弾を浴び、さらに二死から杉本に勝ち越しホームランを打たれて逆転負けを喫しているが、伊藤将は、森、頓宮に許した連打での1失点以外は、オリックス打線を手玉に取っていた。19日のCSファイナルステージの広島戦は、緊張からか本来の出来ではなかったが、それでも7回5安打1失点にまとめている。信頼の左腕だ。
また第2戦で3度のチャンスで凡退し、進塁打も打てなかった3番の森下を我慢起用する方針も固めた。ルーキーに試練という名の経験を積ませ、そこを乗り越えさせたいという岡田監督の親心だ。“逆シリーズ男”が出てくることが致命傷となる短期決戦ゆえ、チャンスは、そう何試合もないだろうが、打線のキーマンだろう。
一方のオリックスの先発は、今季7月から彗星のごとく飛び出した育成出身の本格右腕の東だ。最速155キロのストレートを軸に持ち球はスライダー、カーブ、チェンジアップ、カット、シュート、ツーシーム。チェンジアップの空振り率が高く、スライダー、ツーシームの被打率が低い。まだプロ入り後、一つも負けていない。
パの野球に詳しい阪神OBでもある評論家の池田親興氏は、「球持ちのいい角度のあるストレートが武器。打者が差し込まれる。変化球のキレとコントロールもよく、内角を攻めきれる打者に向かう気持ちがあるのが長所。緊張がどう影響するかだが、阪神側から見ると、初見のチームは苦労するかも」と分析する。
甲子園では阪神に“地の利”がある。
DHなし、浜風、土のグラウンド、ファンの大声援の4点セットだ。
池田氏が補足する。
「この季節は甲子園の浜風はライトへ吹く時もあり、森をライトで使うならば、その対応は簡単ではないと思う。パにはない土のグラウンドへの対応も難しい。オリックスも阪神と同様に守りの堅実さで勝ってきたチームだけにミスが命取りになる。また左足甲の疲労骨折をおしてDHで出場していた頓宮が、守らねばならなくなるので負担がかかる。左足首を痛めてベンチを外れていた杉本もなおさら使いにくい。またオリックスの投手陣がバントをしっかりとできるかどうか。打線のつながりは、9番投手の戦いに慣れている阪神に軍配が上がる。加えて、おそらく球場をジャックすることになる大応援が阪神にとっては強力な後押しになると思う。現段階では完全に5分5分の状況。ここから阪神が地の利を生かして流れを奪うことができるか、それともオリックスが食い止めるか」