「驚くほど速い!」F2000Tで総合優勝した“女子高生レーサー”野田樹潤は夢のF1ドライバーになれるのか…カギを握る2024年の戦い舞台
女子高生プロレーサーの”Juju”こと野田樹潤(17、のだ・じゅじゅ)が、快挙を成し遂げた。イタリアを中心に開催される「F2000トロフィー」で総合優勝を果たしたのだ。
このニュースは日本のモータースポーツ専門媒体だけでなく、一般のメディアも採り上げるほど注目を集めた。その理由のひとつは、父親が元F1ドライバーの野田英樹さん(54)であること。そして、もうひとつは、Jujuが女性であり、まだ高校生だということだ。
一部メディアの中には「国際F3規格のレースで女性として史上初のシリーズチャンピオンを獲得した」と報道しているところもあったが、正しくはない。
国際F3規格のレースで勝ったのではない
確かに使用しているマシンのダラーラF320は、国際自動車連盟(FIA)が2019年に設立したFIA F3選手権で使用されている車両と同じだが、2019年以降、国際F3規格のレースはFIA F3選手権だけとなっているため、正確には「旧F3規格」のレースで初の女性チャンピオンとなったことになる。
イタリアF3だったF2000トロフィーが「F3」から名称を変更しなければならなかったのもそのためで、FIA F3選手権と同じマシンを使用していたとしても規格としては、国際F3規格とはならないというのが実情だ。
FIA F3選手権が設立されるまでは、イタリアF3をはじめとした各国のF3選手権はF1直下のカテゴリーとなっていたGP2シリーズへステップアップするための登竜門となっていたが、FIA F3選手権が設立されてからは、その役目を事実上失っている。
それを物語っているのが、参戦しているドライバーたちの年齢だ。現在のF1は20歳代前半でデビューするドライバーが多いため、2つ下のカテゴリーであるFIA F3選手権に参戦しているドライバーの多くのは10歳代だ。ところが、F2000トロフィーで今年、Jujuに次いで年間2位となったベンジャミン・ベルタは20歳で、年間3位のサンドロ・ゼルエルに至っては31歳である。
さらに前年の覇者であるパオロ・ブライニックは55歳で年間王者となり、その前年のベルナルド・ペレイグリーニもまた56歳という高齢での王者獲得だった。つまり、現時点でF2000トロフィーで年間王者となったJujuが、これでF1への道が開かれたのかと問われれば、簡単には首を縦にふることはできない。
では、なぜJujuはF2000トロフィーに参戦したのか。そこには、Jujuが背負った特別な事情が見え隠れする。
3歳でレーシングカートを始めたJujuがレースを開始したのは4歳。デビューレースで見事優勝すると、その後も毎年のように優勝を重ね、9歳でFIA F4のマシンをドライブ。11歳で「フォーミュラU17チャレンジカップ」(F4相当)に初参戦し、12歳のときに参戦した同シリーズのF3マシンクラスに転向すると、13歳のときには出場したレースで全勝するという圧倒的な速さを見せた。
しかし、若くしてステップアップしたJujuには、14歳という年齢が逆に国内でレース活動を続けるための障害となり、活動拠点をヨーロッパに移し、2020年にデンマークF4選手権に参戦。2022年には女性ドライバー限定のフォーミュラ選手権であるWシリーズに参戦した。ところが、この2つの選手権でJujuを待ち受けていたのは、到底満足できるとはいえない体制だった。Jujuが乗るマシンは常にトラブルに見舞われ、Wシリーズではマシンが真っ直ぐに走らないほどひどい待遇を受けた。
そこで今年は、再び父親が代表を務めるノダ・レーシングの下でレース活動を行うことになった。しかし、デンマークF4とWシリーズで遠回りなキャリアを積んでしまったJujuには、いきなりFIA F3選手権へ挑戦するよりも、F3格式ではなくとも、同じマシンでレースができるもうひとつ下のカテゴリーのほうが今後につながると判断したのだろう。そして、その決断はF2000トロフィーの総合優勝によって、間違っていなかったことを示した。