「ウチの球団でも獲得に手を出すのは難しい」楽天を“パワハラ退団”となった安楽智大に他球団での再起の道はあるのか?
楽天は30日、後輩選手へのパワハラ行為が発覚し、契約更改を延期していた安楽智大投手(27)を保留者名簿に記載せずに自由契約とした。チームは、137人の選手や関係者からヒアリング、アンケートなどの調査を行い、これまで報道されていたパワハラ行為がほぼ事実であったと認定。森井誠之球団社長は、来季再契約しない方針を明言、チームを退団することになった。安楽の今後はどうなるのか。かつて楽天でコーチを務め、来季からイースタン・リーグに新規参入するオイシックス新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏は、「これですべての問題が出尽くしたかも不明で、選手を集めているウチでさえ手を出しにくい。再生の道は絶たれるべきではないが、来季のNPB復帰は難しいかも」との見解を明かした。
醜いパワハラ行為がほぼ事実と認定。10人被害
パワハラの代償はあまりにも大きかった。楽天が、3年連続で50試合以上に登板し、今季も57試合登板、防御率3.04、3勝2敗、10ホールドの成績を残してブルペン陣を支えてきた安楽を保留者名簿に載せず自由契約にすることを発表した。
安楽からパワハラ被害にあった選手からの訴えが、契約更改などの席で球団に届くようになり、スポーツ各紙に報道されたのが先月の25日。球団は、安楽の契約更改を延期して、ただちに調査に入り、計137人にヒアリング、アンケートなどを行った結果、10人もの選手がパワハラの被害を受け、報道の通り、ロッカールーム内で後輩選手の下半身を露出させた行為や、深夜の嫌がらせ電話、罰金徴収など、平手打ち以外のパワハラ行為がほぼ事実と認定された。
シーズン中であれば契約解除に相当する“厳罰”が科せられたわけだが、楽天で計6年のコーチ経験があり、安楽が入団した2015年は、1年間重なっているオイシックス新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏は、「自由契約となることは、十分に予想されたし、被害を受けた選手のメンタルのダメージを考えると仕方がない措置」と、楽天の決断を受け止めた。
「安楽は2015年には1試合に先発しただけなのであまり接点はなかったが、当時は口数も少なく、そういうタイプの選手には見えなかった。ただ2015年に楽天とコーチの契約をした際には、体罰を伴うようなパワハラ的な指導は絶対に行わないということが文書になっていた。その年はデーブ大久保が監督で、彼は西武コーチ時代にパワハラ騒動を起こして解雇されているので、僕よりさらに厳しく細かい約束事が契約に書かれていた。楽天は、コンプライアンスに非常に厳しい球団。ひと昔前であれば、今回、安楽がやった、いきすぎた後輩いじめのようなものは、どのチームにもあったし、そもそも表にも出てこなかったが、今の時代は、そうはいかない。新潟アルビレックスでも、選手同士のそういう問題はあった。口頭で注意し、時には、ペナルティも取った。プロ野球は、選手は個人事業主だし、パワハラを受けた側の気持ちを考えると、当然の措置だろう」
当時の“デーブ”大久保監督は、選手と2人きりになって指導を行うことも球団から禁じられており、橋上氏が必ず同席したほどで、その頃から球団としてパワハラ問題には気を配っていたという。
気になるのは安楽の今後だ。球団は“救済”に含みを持たせながらも来季の再契約は行わない方針を明かした。
日ハム時代の中田翔が同じくパワハラ問題を起こして無期限出場停止処分を受けている間に巨人にトレードされて出場機会を得た例があるが、安楽にも他球団で再起できる可能性があるのだろうか。