天皇杯決勝のPK戦は10人目のGK対決に突入し川崎の鄭成龍(チョン・ソンリョン、赤ユニ)が柏の松本健太(緑ユニ)が左を狙ったシュートを止めて決着をつけた(写真:つのだよしお/アフロ)
天皇杯決勝のPK戦は10人目のGK対決に突入し川崎の鄭成龍(チョン・ソンリョン、赤ユニ)が柏の松本健太(緑ユニ)が左を狙ったシュートを止めて決着をつけた(写真:つのだよしお/アフロ)

川崎を天皇杯王者にした10人壮絶PK戦の舞台裏

 サッカーの天皇杯決勝が9日、東京・国立競技場で行われ、川崎フロンターレが0-0のままもつれ込んだPK戦を8-7で制して柏レイソルを破り、3大会ぶり2度目の優勝を果たした。延長戦を含めて120分間の攻防で決着がつかなかった大一番は、PK戦でも、史上最多の10人ずつが蹴り合う死闘となり、守護神対決となった10人目で柏の松本健太(26)のキックを川崎のチョン・ソンリョン(38)が止めた。過去最多の6万2837人の大観衆を熱狂させた、壮絶なPK戦の舞台裏に迫った。

 綿密なデータを使った駆け引き

 

 延長戦を戦い終えた先にさらなる死闘が待っていた。
 0-0のままもつれ込んだPK戦。先蹴りの川崎はFW家長昭博(37)が1番手を担い、ゴール右隅へ強烈な一撃を突き刺した。しかし、対峙した柏のキーパー松本はコースを完璧に読み切りながら、わずかに届かなかった。そして、迎えた川崎の2番手、FW瀬川祐輔(29)のPKを右へダイブしてセーブしてみせた。
 このときは瀬川が蹴るよりも松本が先に前へ動いたとして、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入した末に蹴り直しとなった。それでも、家長に続いて瀬川のPKのコースも予測できた理由を、試合後にこう明かしている。
「川崎さんに関しては天皇杯のPK戦(準々決勝のアルビレックス新潟戦)のデータがしっかりとあったので、スカウティングに関しては基本的に他のチームよりも多かった。瀬川くんのときに僕がちょっと前に出ちゃったのは残念でしたけど、そうしたデータをもとにゴールライン上でしっかりと駆け引きができたと思っています」
 蹴り直した瀬川には逆を突かれて決められたものの、川崎の4人目、MF橘田健人(25)が決めたゴール左への一撃にもしっかり反応できていた。こうした積み重ねが柏の4人目、MF仙頭啓矢(28)が左ポストに当て、リードを許した土壇場で生きた。
 川崎の優勝がかかる5人目を託されたのは、8月に加入した元フランス代表のFWバフェティンビ・ゴミス(38)。仏リーグアンで通算122ゴールを決めたストライカーを送り出した時点で、川崎の鬼木達監督(49)は3大会ぶり2度目の天皇杯戴冠を確信していた。
「(ゴミスは)普段はPKが一番上手だと言っていいくらい、本当にいいキックをするので、おそらく選手全員が決めるだろうと思っていたはずです。でも、ああいう大舞台ではあったので、いかに経験のある選手と言っても……」
 ゴミスのコースを読み切った松本は、自身から見て左へダイブ。完璧なセーブを演じて柏の窮地を救ってみせた。実は松本はゴミスに対して、精神的に優位に立っていた。理由はPK戦に突入する直前、延長後半13分のビッグセーブに行き着く。
 右サイドからDF山根視来(29)が放ったクロスと、ゴミスの頭がピンポイントで合致。強烈なシュートがゴール右隅を襲うも横っ飛びした松本が防ぐ。さらにゴールポストに当たってこぼれたボールに家長が詰めたが、これも松本が阻んだ。

 

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