「KOする詐欺はやめる」1.23大阪で世界ランカーに挑む那須川天心は本当に公約を守れるのか…公開練習で披露した超攻撃的スタイルへの進化と能登震災への500万円の義援金
プロボクシング転向3戦目(1月23日・エディオンアリーナ大阪)で世界ランカーに挑む那須川天心(25、帝拳)が10日、都内の帝拳ジムで公開スパーリングを行い、「KOする詐欺をやめる」と初のKO勝利を約束した。2人のメキシコ人パートナーを相手に披露したのが、その約束に説得力を持たせる超攻撃スタイルへの進化だ。そして、それを裏づける数々の証言も。また天心は自身のXで能登地震の被害にあった石川県に500万円を寄付したことを明かした。
「みんなが見たことがないものをお見せできる」
「KOする詐欺をやめます」
スパーを公開する前の質疑で天心はこう公約した。
「KOしたいですよ。(KOを)狙っていないとかいう奴もいるかもしれないがKOしたほうが楽。ただこれまではやり方がわかっていなかった。それさえ噛み合えばバンバン行く。それを嚙合わせる練習をしている。前回になかった距離の詰め方、まとめ方、足りないパーツをどんどん集めた。完璧じゃないが揃ってきたんじゃないか」
そして「みんなが見たことがないものをお見せできる」とも言った。
昨年4月のデビュー戦は日本ランカーの与那覇勇気(真正)からダウンを奪いながらも判定決着。9月の第2戦には「倒すこと」をテーマとして臨みルイス・グスマン(メキシコ)からダウンシーンは演出したが、またしても判定にもつれこみ、「KOできない天心」が話題にもなった。それらを踏まえての「詐欺はあかんでしょう」なのだが、天心が、4ラウンドの“本気スパー”で披露した姿は、その言葉に嘘がないことを示す超攻撃的天心に進化した姿だった。
最初に拳を交えたのは、22戦無敗で元WBCユースのバンタム級王者で現在WBC世界バンタム級28位のカルロス・ノルベルト・ロペス(25)。
「いつもと変えてきた。もっとくるタイプだが一歩引いてきた」という相手に最初は様子を見たが、攻撃に移行できる距離をキープしながら、ジャブとフェイントでプレスをかけると、コーナーにつめて4連打、5連打の高速コンビネーションを上下に浴びせた。2ラウンド目も、センス抜群の右のフックのカウンター、相手のパンチを外しての左のボディブローのカウンターを決め、少しでもひるむとロープにつめて強烈な左を何発もお見舞いした。ロペスの体重は63キロ。今回は、スーパーバンタム級とバンタム級の間の121ポンド(54.89キロ)契約で戦う天心よりも実質、2階級上のロペスは、ほぼ何もできなかった。
ロペスは、こう証言した。
「左のパンチが素晴らしい。右もいろんな角度で打てて完成度が高い。ただでさえサウスポーはやりにくんだが、出入りが早いので、こっちの距離がキープできずに特にやりにくい。パンチもキレる。キャリアを積めばミスター本田がタイトルマッチを組むだろう」
2人目は26戦21勝(15KO)2敗3分けのキャリアを持つヘスス・ラミレス・ルビオ(28)。こちらはパワータイプで、WBC世界スーパーフライ級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)らとのスパー経験がある猛者だったが、天心は、うまく距離を作りながらコントロール。ロープを背負わせて強烈なワンツー、左ボディを叩き込んだ。
ルビオも天心の才能と長所を絶賛した。
「強くて速い。そしてクレバーだ。こっちがパンチを出そうとすると、わかっていたかのように対処される。スーパーバンタム級ではパンチはある方。試合で使う8オンスのグローブでタイミングよく当たればKOで決まるだろう」
これまでの天心は、どちらかと言えば、距離を取りカウンター主体の天才型スタイルだった。しかし、この日は、パンチの届かない距離でボクシングをする時間は、ほぼ皆無。一発当てた後の後のラッシュに凄みが増した。元2階級制覇王者で専属トレーナーの粟生隆寛氏も「常に攻撃のできる距離でボクシングができるようになった」と証言した。