「江川卓は?」なぜ“ミスタータイガース”掛布雅之氏はわずか2票届かずに殿堂入りを逃したのか?
日本の野球殿堂入りの発表、通知式が18日、野球殿堂博物館で行われ、プレーヤー表彰では、広島、ヤンキース、ドジャースで、日米通算203勝をマークした黒田博樹氏(48)と通算3021試合出場のNPB最多記録を持つ元中日、横浜の谷繁元信氏(53)の2人が珍しい同票で選ばれた。監督、コーチ退任後6か月以上、もしくは現役引退後21年以上の選手が候補者となるエキスパート表彰では、有力候補だった阪神OBの掛布雅之氏(68)が当選ラインにわずか2票足りずに落選、2年ぶりに該当者なしとなった。その掛布氏の心境を直撃した。
わずか2票が足りず“ミスタータイガース”の殿堂入りはならなかった。
殿堂入りには有効投票数の75%以上が必要で、今年度の当選ラインは111票だったが、掛布氏は109票だった。
昨年度は、1985年に日本一となった阪神の盟友であるランディ・バース氏が、エキスパート表彰での殿堂入りを果たし、掛布氏は、次点で102票を集めたが、当選ラインに14票届かなかった。野球殿堂の傾向として僅差で届かなかった候補者が、次年度に選出されるケースが多く、掛布氏には、今年度の殿堂入りの期待が高まっていたが、意外と票数が伸びなかった。
エキスパート表彰での該当者なしは2年ぶり7度目だという。
逆に票を伸ばしたのは、元阪急の長池徳士氏が71票から91票、そしてWBCで世界一となった侍ジャパンで監督を務めた栗山英樹氏が24票から62票。また新候補となった元西武監督の辻発彦氏も13票を集めた。バース氏の浮いた票は、掛布氏に流れずに分散した形だ。昨年は現役時代に共にクリーンナップを組んだ岡田彰布監督の率いる阪神が18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に輝いた。その“追い風”に乗り、掛布氏の功績が見直される可能性が高いとも予想されていたが、残念な結果となった。
掛布氏に、その結果を伝えた。
「そんなにも票をいただき光栄ですよ。入れていただいた109人の記者の方々には本当に感謝の気持ちを伝えたいです。でもね、選ばれなくて良かったという気持ちも、どこかに正直あるんですよ。私なんかが殿堂入りすることは、おこがましいじゃないですか。静かにしておいてくださいよ(笑)」
そして掛布氏に「江川にはどれくらい入ったの?」と逆に尋ねられた。
そもそも江川氏は、18人の候補者に入っていないことを伝えると、すっかり候補者の1人だと思い込んでいた掛布氏は「え?そうなの」と絶句。
「江川や私はそういう素晴らしい栄誉や賞とは無縁のところでいることがふさわしいのではありませんか?」と謙虚に話した。
掛布氏と江川氏は、同じ1955年5月生まれの68歳である。掛布氏は1973年に習志野高からテスト生同然のドラフト6位で阪神に入団。江川氏は、作新学院、法大から1年の“浪人生活”を経て、例の空白の1日の問題があった1978年に阪神ドラフト1位→その後、コミッショナーが介入して巨人にトレード移籍という異例の形でプロ野球界に入ってきた。プロ年数は違うが、互いに阪神と巨人の4番とエースのライバルとして名勝負を繰り広げてきた。