なぜ転向3戦目の那須川天心は総額1500万円もの義援金を能登の被災地に寄付したのか…「格闘技は必要ないかもしれないが戦うことで伝えられる力がある」…初のKO勝利にかける思いを明かす

　プロボクシングの「PRIME　VIDEO　PRESENTS　LIVEBOXING6」（23日・エディオンアリーナ大阪）の公式会見が21日、大阪市内のホテルで行われ、転向3戦目で早くも世界ランカーに挑む那須川天心（25、帝拳）が能登半島地震の被災地へ関係者の分も含めて総額1500万円の義援金を寄付した経緯と、この試合を通じて伝えたいものを明かした。試合はAmazonPRIME VIDEOで生配信される。

　故アントニオ猪木の風車理論

　大阪のリングに上がる今回の天心は強い。
　なぜなら戦う理由を明確に持っているからだ。
　ボクシング転向3戦目にしてWBAとWBOのバンタム級14位のランクされている世界ランカーのルイス・ロブレス（25、メキシコ）に挑む天心は、先だって自腹で500万円、意思に共鳴してもらった人々の寄付をまとめる形で続けて1000万円を能登半島地震の被害にあった石川県に義援金として寄付したことを自身の公式Xで報告していた。
　試合を2日後に控え大阪で開催された公式会見の質疑応答でその経緯を明かす。
「僕はモットーとして、この世の中の困っている人だったり、大変なことがある人にすぐ手を差し伸べられる人にならなければならない、と思っている。そういった時に口だけでなく、しっかりと行動することが大事なことだと思い、寄付をさせていただいた」
　寄付をした後、SNSを通じて天心のもとに小さな子供から「私もお年玉を寄付しました」とのメッセージが届いたという。
「有名な人がやってくれているということでいい連鎖ができている。（義援金は）そのきっかけに過ぎない。こういうときに有名人でよかったなと思う」
　そして天心は、こう踏み込んだ。
「日本が大変なときに、格闘技って必要か、必要じゃないか、と言えばいらないと思うんだけど、戦うことの力は大きい。僕だけじゃなく、興行を盛り上げて戦っていくことの素晴らしさをみなさんに伝えていきたい。僕の試合を見て、誰かしらが何かのきっかけになれば」
　大阪のポップアップストアでも寄付を集めているという。
「ここで進化を見せなければならない」との使命を自らに課す。
「天心が倒すという方が見せ方としてもいいじゃないですか。世界ランカーを相手にそうなっているのもおかしいが、引き続きそこ（周囲の声）とも戦っていく」
　デビュー戦から2試合連続でダウンを奪い、ほぼワンサイドの内容だったが、いずれも判定にもつれこんだ。「天心はKOで勝てない」の声がSNSの中で飛び交ったが、初のKO決着への準備も万全に整えた。
「『風車の理論』ではないですけど、そういったところを持っているので、すごく楽しみ。強い相手であればあるほど実力を発揮できる。相手ランカーでも関係なく圧倒できる。キックのときもそう。全部を出して通用しなかったことがない。相手によって対応できる。すべてを出せる」
　「風車の理論」とはプロレスラーの故・アントニオ猪木氏が、提唱、実戦してきた格闘理論。猪木氏は、アンドレ・ザ・ジャイアントや、ハルク・ホーガンのように相手が、強ければ強いほど、その良さを引き出した上で、まるで風車のように、その力を利用して自らの強さをアピールした。