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沖縄宜野座でプチ優勝パレードが行われた(写真・黒田史夫)
沖縄宜野座でプチ優勝パレードが行われた(写真・黒田史夫)

「あれじゃ打てへんのとちゃうか?」阪神の岡田監督が森下翔太の新スイングに疑念を抱きながらもノータッチ方針の理由とは?

 阪神が1日、沖縄・宜野座の「バイトするならエントリー宜野座スタジアム」で春季キャンプのスタートを切った。岡田彰布監督(66)が注目したのは、2年目の森下翔太(23)が取り組んでいる新打法。「あれじゃ打てへんのとちゃうか?」とぼやいたが、あえて修正には動かず、当面ノータッチの方針を決め込んだ。森下が大打者に育つためには思い悩む時間が必要だと判断した指揮官の親心である。セレモニーの挨拶では「今年はアレを使わずに連覇を第一目標に」と宣言した。指揮官には球団史上初の連覇へ向けてチームが成長するとの自信がある。

 

森下翔太の新打法に岡田監督が疑問を投げかけた(写真・黒田史夫)

 「これやと思ったことを地道にやって結果が出たときにモノになる」

 最高気温が25度を超える沖縄の青空の下で森下の新スイングは空回りしていた。3冠王を達成した“レジェンド”ミゲル・カブレラを参考にしたという「体の回旋」と「バットの体への巻き付け」を意識した新打法。コンタクト率のアップが目的だそうだが、典型的なパワー打法に見え、バットのヘッドを返さずに力任せに振るので打球が上がらない。
「変な打ち方をしてたな。ゴロばっかり。(打球が)上がっても差し込まれてフライばっかりやったな」
 岡田監督は、ケージの真後ろで、打撃練習を見ながら苦笑いを浮かべて、水口打撃コーチに、こう伝えたという。
「あれじゃ打てへんのとちゃうか?」
 森下も思ったような打球を打てずに首をひねるシーンが多かった。
「力を入れているのにボールが飛ばんと自分でもおかしいと思っているんやろうな。バッティングは力を入れるんじゃなく、コツやから。それがわからんとあかん」
 岡田監督は森下が新しく取り入れているバットについても言及した。
 ルーキーイヤーの昨年のキャンプにバットをたった3本しか持ってこなかったエピソードを「そんな選手おらんやろ」と紹介しつつ、今回、ティー打撃用も含めて持ち込んだ数種類のバットのひとつが、ピート・ローズ型であることを明かした。メジャー最多の通算4256安打を誇る大打者のバットだ。ちなみにピート・ローズ氏は、野球賭博にかかわった“罪”で永久追放処分となっている。
 森下は昨年、打率.237、10本塁打、41打点の成績を残した。数字以上に、ここ一番での殊勲打にインパクトがあった。今季は本塁打20本を目標に掲げて新打法に取り組んでいるが、岡田監督は用意したバットが、それとは相反する打率型であることにも疑問を投げかげた。
「よう名前知ってたな。森下の親父でも知らんでえ。82歳やろ。でも安打製造機。本塁打を打ちたいとは逆行してるやん(笑)。ピート・ローズは4000何本打ったからね。森下も4000何本打つつもりやんか(笑)」
 岡田監督が森下に求めているのは安定性であり打率のアップ。
 それでも岡田監督はメスを入れなかった。
「初日やからな。どうこうせえはちゃうよ。キャンプはまだまだ長いので大丈夫やと思うけどな」
 そして森下に伝えようと打撃の奥深さを熱く説いた。
「バッティングは、相手が崩しにくる。バッターは受け身になるから、これがええとか、2月1日に言われへん。去年も大山は(キャンプから)オープン戦でも全然打てへんかった。でも変えることなくやっていたら、ええ結果が出たやん。バッティングは難しい。すぐに結果は出ない。これやと思ったことを地道にやって最終的に結果が出たら、自分のものになるけどな。結果が出ないから変えようとかを繰り返すと、バッティングは自分のものにならない」
 苦労して努力を続けた先に2年目のジンクスを超えた究極の極意が待っている。指揮官は、森下が球界を代表する大打者になる可能性のあるスラッガーだけにあえて、そのチャレンジをしばらくは静かに見守る方針なのだ。
 昨年も「バットを立てろ」とシーズン中にワンポイントアドバイスを与えて、森下はV字回復した。そういう森下の対応力と吸収力を認めているからこそのノータッチなのである。そしてまた森下も、ぶれずに新しい取り組みを続ける考えを明かしている。

 

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