なぜパリ五輪予選第1戦の北朝鮮での開催が“白紙”に戻ったのか…困惑するなでしこジャパン
今夏のパリ五輪出場をかけて、今月24日に第1戦が行われる女子サッカーのアジア最終予選で、なでしこジャパン-北朝鮮女子代表の開催地が平壌から一転して未確定となった。8日に千葉市内で行われた代表メンバー発表会見で、日本サッカー協会(JFA)の佐々木則夫女子委員長(65)が、アジアサッカー連盟(AFC)が朝鮮民主主義人民共和国サッカー協会(DPRKFA)に対して、中立地開催を提案していると明らかにした。大事な一戦を前に、なぜ開催地が白紙となる異例の事態が起こったのか。
中立国での開催要望も返答なし
なでしこジャパンのメンバー22人のリストとともに、JFAから配布された1枚のリリース。今夏のパリ五輪出場をかけて、北朝鮮と24日に第1戦、28日には東京・国立競技場で第2戦を戦うスケジュール欄には、「未定」の2文字が実に23個も並んでいた。
昨年12月30日にAFCから発表された段階では、第1戦の会場は北朝鮮の首都・平壌にある金日成競技場となっていた。一転して開催地が未定となった理由を、なでしこの池田太監督(53)とともに代表メンバー発表会見に臨んだ佐々木女子委員長はこう説明した。
「第1戦に関しては、AFCが中立地での開催を提案する通達をDPRコリア(北朝鮮)協会に出しています。理由については、DPRKFAとJFAによる各種調整状況をAFCにモニタリングしていただいたなかで、DPRコリアに発着する定期便が飛んでいない点や、競技運営の観点からも試合開催に向けたロジ周りのオペレーションで不透明な点が多い状況から、中立国で開催する方向で計画してはどうかとAFCが強く要望したようです」
日本と北朝鮮の間には国交がなく、さらに2017年4月には外務省が北朝鮮全土を対象に「目的の如何を問わず、渡航は自粛してください」と要請している。同省海外安全ホームページには、渡航自粛措置の理由に関して現時点でもこう記されている。
「北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返しています。こうした状況も踏まえ、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決のために我が国がとるべき最も有効な手段は何か、という観点から、一連の我が国独自の対北朝鮮措置を実施しています」
ゆえに佐々木委員長が言及したように、両国間には定期便も就航していない。直近では男子のザックジャパンが2011年11月に、ブラジルW杯出場をかけたアジア3次予選を平壌で戦ったが、その際は中国・北京経由で北朝鮮入りしている。
入国には外務省など関係省庁の協力をえて準備が進められた。しかし、在北京北朝鮮大使館で査証を取得するのに1時間を要し、平壌空港ではさらにパスポートチェックと荷物検査に2時間ずつを要するなど、全員が完全に入国するまで5時間もかかった。