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井上浩樹(右)が永田大士を4ラウンドに追い詰めるも拳を痛めて失速し判定負け(写真・山口裕朗)
井上浩樹(右)が永田大士を4ラウンドに追い詰めるも拳を痛めて失速し判定負け(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥の“いとこ”浩樹は4年越しのリベンジに失敗して2度目の“引退”を口にしたのか…「正直、僕はもうここまで」

 プロボクシングのWBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者の井上浩樹(31、大橋)とOPBF東洋太平洋同級王者の永田大士(34、三迫)の統一戦が22日、後楽園ホールで行われ、井上が0-2(114-114、113-115、112-116)の判定で敗れ、試合後に引退の意向を示した。井上にとって永田は4年前にTKO負けを喫して一度目の引退を決意するきっかけとなった因縁の相手。4ラウンドにダウン寸前に追い込む猛攻を見せたが、左拳を痛めて、その後、手が出なくなり、手数で上回る永田にポイントを奪われ続けた。

 モンスターの助言も空しく拳を痛めて失速

 最終ラウンドを前にしてリングサイドの最前列にいた“いとこ”のスーパーバンタム級世界4団体統一王者の井上尚弥が絶叫した。
「倒せ!」
 明らかにポイントでは不利だった。
「ポイントでは間に合わないと思った。倒しにいかないと、と圧力をかけて下がらないようにしたんですが…12ラウンドとったんですかね?」
 頭をつけてインファイトを仕掛けた。永田も下がらずに応じて、互いにボディを連打しあう壮絶な殴り合いになった。左右のフックやアッパーを交えた井上の迫力が上回り、このラウンドは、ジャッジが3人とも井上を支持したが、永田も歯を食いしばり、最後までパンチを出し続けた。
 試合終了を告げるゴングと同時に井上はコーナーのロープに両手をかけて下を向いた。ジャッジペーパーが読み上げられる前に「負けかなと思っていました」という。1人がドロー、2人が永田を支持しての0―2判定負け。井上は、4年越しのリベンジを果たせなかった。
「(パンチを)効かしてまとめたときですかね」
 アクシデントがあった。
 4ラウンドの猛攻で永田をダウン寸前に追い込んだ。右のアッパーが顎をとらえ、左右のフックをぶんまわして、永田がよろけて下がる、三迫会長は「KO負けが頭をよぎった」という。だがこの時、井上は左の拳を痛め5、6、7、8ラウンドと続けて、まったく手が出なくなった。痛めていない右のフックは威力十分で、それだけでペースを奪えそうだったが、井上は最悪のパターンに迷い込んだ。
「手が出なくなり、ちょっと焦っちゃいました」
 一方の永田は、陣営の加藤、横井両トレーナーの指示に従い、ジャブを突きながら左へ回り、ワンツーからの連打、ボディ攻撃とパンチをまとめて、手数で上回り着実にポイントを重ねていく。
「見苦しい戦いでも自分の戦いに持ち込めば勝ちだ」
 セコンドからは「胸を張れ!」と姿勢を正す指示が何度も出た。
「前傾で頭が下がると(井上が得意の)アッパーが来る。胸を張ることでアッパーをもらわない距離をとり、狙いを外すのが目的」と加藤トレーナー。
 永田が胸を張るようにして背筋を伸ばすと、井上との間に微妙な距離が生まれ、嫌なアッパーを食らわなくなった。
「その指示で何発も回避できた。三迫のチームの信頼関係で僕は勝てたと思う」
 井上は流れをつかめないまま終盤を迎えた。
 その時、井上尚弥の声が聞こえた。
「ジャブを使ってポイントを取れ!」
 井上は我に返った。「そのことが頭から離れて打ち返すことばかりを考えていた。そうだと」。だが、すでに時は遅し…。
 控室に戻った井上は敗戦を受け入れていた。
「(永田への)挑戦、リベンジが決まってから…いや負けて復帰してから充実したトレーニングができて前よりは強くなれたと、正直、今日思えた。それでも一歩が足りなくて…。その一歩は、永田選手は辞めずにずっと頑張ってきたが、僕は辞めた空白の2年があって、その部分の差が出た。くじけずにひたむきにやる選手が強いんだと実感した」
 永田へのリスペクトの言葉を残し、こう続けた。

 

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