井上尚弥が近い将来狙う世界フェザー級タイトル戦線動く…米国上陸の“サラリーマンボクサー”阿部麗也は右目に深刻ダメージ受けて8回TKO負けでベルト奪取ならず
プロボクシングのIBF世界フェザー級タイトルマッチが2日(日本時間3日)、米国ニューヨーク州のベローナで行われ、同級1位の阿部麗也(30、KG大和)が王者のルイス・アルベルト・ロペス(30、メキシコ)に挑んだが、8ラウンドにTKOで敗れ、長谷川穂積以来、14年ぶりとなる同階級での日本人の王座奪取はならなかった。阿部は2ラウンドに右目が腫れて塞がるほどのダメージを受けそれが響いた。またメインで行われたWBA同級王座決定戦は同級2位のレイモンド・フォード(24、米国)が同級1位のオタベク・ホルマトフ(25、ウズベキスタン)を12ラウンド終了残り7秒でTKOで下して新王者となった。ロペスはフォードとの統一戦を希望しているが、スーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(30、大橋)が将来的に戦う可能性のある階級だけに、今後のタイトル戦線の動向からも目が離せない。
「完敗ですね。弱みを見せて後手後手に回った」
王者のロペスが「来い!来い!」とグローブで挑発し、右手を振り回して観客の声に応えたのがフィニッシュのサインだった。8ラウンド。ロペスがノーガードから猛ラッシュ。クリーンヒットはなかったが、日本から来た挑戦者の右目が塞がるほどの腫れとダメージもあったことから、レフェリーは試合をストップした。
リング上でロペスが吼える。
「ファンに感謝している。リングサイドの妻の顔、娘の顔が見えたので、ここで決めてやると思ったんだ」
ほぼ一方的な試合展開と阿部の目の状況を考慮すると妥当な判断だっただろう。阿部も「相手が来たなという感じでした、こっちは防戦一方になって手を出せなかったんで。やっぱ(ロペスは)強かった」と審判の判断を受け入れた。
「完敗ですね。どんなもんかと様子を見ている矢先に目に(パンチを)もらって気持ちが若干沈んだ。そこで弱みを見せちゃった。完全に後手、後手になってペースを取られて何もできなかった。気持ち的に(ロペスの勢いを)止められない試合になっちゃった」
2ラウンドに起きたアクシデントがすべてだった。
左のパンチが相打ちとなったが、王者のそれが先に当たり阿部の右目付近を直撃した。みるみる腫れあがり、青黒く変色。致命的なダメージでほぼ目が塞がってしまったのだ。
コーナーに帰ってきた阿部に片渕剛太会長も驚きを隠せない。
「めっちゃ腫れたな。なんだこれ。パンチか?」
すぐさまドクターの綿密なチェックが入った。見えていないなら即ストップ。
試合は続行されたが、しばらく視界がなくなり大事な世界戦で阿部は大きなハンディを背負うことになった。阿部は身長で9センチ有利のサウスポー。ステップワークを駆使しながら、右のフックで相手の出鼻にパンチを打ち込み、ノーガードの超変則で強引に突っ込んでくるロペスの喧嘩殺法を止めて、左のダメージブローを浴びせるという作戦が機能しなくなった。強引に右アッパー、ボディ、左フックと、好き放題、ぶんぶん振り回してくるロペスの決定的な被弾をかろうじて避けるだけという状況に陥ってしまった。
ラウンドが進むにつれ目が少し開きだした。
「痛いけど我慢だぞ」
「相手は油断している。休みモードに入っているぞ。打ち終わりを狙おう」
セコンドの声が響く。
攻撃が雑になったロペスの打ち終わりに左を狙い、何発かは当たった。だが、単発に終わり、しかも、しっかりとステップインできていないので逆転の一打とはならない。
「完全に守りの態勢になってしまった。ちょっとづつ目が見えてきたので、打ち終わりとかに左を狙おうかなと思っていたところで、また相手がガンガンきた。間合いと(パンチが)出る角度がわからなかった。ボディと思えば。上に飛んできたり、対峙するとわからなかった。スピードとか、返しとか…リズムも独特で打ち込めなかった」