なぜ井上拓真は5.9東京ドーム“兄弟世界戦”に向け「つまんない試合にならない。バチバチにいく」と過激に宣言したのか?
プロボクシングのWBA世界バンタム級王者の井上拓真(28、大橋)が9日、横浜市内の大橋ジムで5月6日に東京ドームで行う同級1位の石田匠(井岡)との指名試合に向けての記者会見を開いた。メインで“悪童”ルイス・ネリ(29、メキシコ)と対戦するスーパーバンタム級の4団体統一王者の兄、井上尚弥(30、大橋)が「兄弟の世界戦はモチベーションが上がる」と語る兄弟世界戦。2月24日に最強挑戦者だったジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を8ラウンドKOに仕留めたばかりで、約2か月しか間隔がないが、むしろ出来上がった肉体のままスライドできることをプラスと捉えた。対戦相手の石田からは「おもんない試合になる」と挑発されたが、「バチバチに行く。つまんない試合にはならない」と宣言した。
わずか2か月のインターバル
異例と言っていい。2月24日にIBF世界スーパーフライ級王座を9度防衛としている強豪のジェルウィン・アンハカス(フィリピン)との激闘を8ラウンドKO勝利で制したばかりの井上拓真が、約2か月の短い試合間隔で、5.6東京ドームでの石田との指名試合に臨むことになった。
メインはスーパーバンタム級の4団体統一王者の兄が“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)と対戦する注目カード。あのマイク・タイソン(米国)が無印のジェームス“バトラー”ダグラス(米国)にKO負けした世紀の番狂わせの以来、34年ぶりとなる東京ドームのビッグマッチに、兄弟揃ってリングに上がりたくて真吾トレーナーが大橋会長に申し入れていたが、拓真は、実現の可能性は「半々だと思っていた」という。
「アンハカスを相手にノーダメージは無理だと思っていた。でも、いざ試合をやって、あの結果。『全然いけるじゃん』と。試合後に控室に戻ったあたりで思った。試合の緊張感とかが好きなんで。選手寿命は限られているのでやれるときにやっておきたい」
幸いにしてアンカハス戦で目のカットや体への大きなダメージもなく、2019年11月以来、2度目となる兄弟世界戦が実現することになった。ちなみに前回は、兄はWBSSの決勝戦でノリト・ドネア(フィリピン)に勝ち、WBC世界バンタム級暫定王者だった拓真は、同正規王者のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に判定で敗れ、まだ世界戦での兄弟ダブル勝利はない。兄は「拓真とのダブル世界戦が組まれていることも、この試合のモチベーションが高い理由のひとつ」と語るが、拓真も「一緒の方が練習で切磋琢磨できる。お互いに励まし、高め合える」と兄弟世界戦がもたらす相乗効果に期待している。
アンハカス戦後、休養は1週間。3月4日からジムワークを再開した。
「試合期間があくと太りやすい。体が仕上がっている状態。逆にいいのかなと」
通常は、この時期にはリバウンドで63、64キロにはなっているが、今は試合当日の60キロから1キロオーバーでとどまっている。「夜中のラーメン」なども禁じて規則正しく食事を摂る節制もスタートしているという。。
減量の幅が違うので、比較対象にはならないが、WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(当時、白井・具志堅ジム、現在志成)は、2018年2月に故郷の沖縄で2度目の防衛戦を行った後、わずか2か月後の4月15日に防衛戦が組まれ、体重超過でタイトルを剥奪され、おまけに試合も9ラウンドTKO負けを喫した。
試合間隔が短いと、目に見えないダメージの蓄積などが心配されるが、真吾トレーナーは、「作り上げた状態のままスライドできる」とプラス効果を口にした。