なぜ浦和「声出し応援問題」に苦言程度だった野々村チェアマンが2000万円罰金&無観客試合などの”最終警告”を発令したのか?
新型コロナウイルス対策で禁止されている「声出し応援」を、一部サポーターが繰り返す浦和レッズに厳罰が科される可能性が出てきた。Jリーグは5日に臨時実行委員会を開き、終了後にオンライン会見した野々村芳和チェアマン(50)が浦和に最大2000万円の制裁金を科し、再発が確認された場合には無観客試合や勝ち点剥奪もありうると明言した。前日までは苦言を呈するレベルだった野々村チェアマンが、一転して厳しい態度で臨んだ背景を追った。
浦和の一部サポのガイドライン違反に対し一夜にして変わったJの対応
苦言から厳罰へ。Jリーグの浦和への対応が一夜明けて大きく変わった。 リーグは各クラブの社長らで構成される実行委員会を5日に急きょ開催。終了後にオンライン会見に臨んだ野々村チェアマンが、一部サポーターが新型コロナウイルス対策で禁止されている「声出し応援」を繰り返す浦和へ、厳しい態度で臨むと明かした。
「今回の事案に関して2000万円を上限に罰金を科すことにプラスして、この先、同じようなことが起こった場合には無観客試合または勝ち点を剥奪することも含めた内容で、第三者の裁定委員会に諮問をした上で決まったペナルティーを科します、ということを実行委員会の場で浦和にも伝えさせていただきました」
今回の事案とは2日のガンバ大阪戦を指している。 敵地パナソニックスタジアム吹田のゴール裏の一角に陣取った浦和サポーターが、場内アナウンスで禁止が呼びかけられ続けたたなかで応援歌を何度も大合唱。さらにはブーイングを繰り返した行為へ、大きな批判が巻き起こっていた。
しかし、前日4日に行われた日本野球機構(NPB)との新型コロナウイルス対策連絡会議の質疑応答で、野々村チェアマンはこう語るにとどめていた。 「各クラブのサポーターがいつも協力してくださっているなかで、そういう行為があったこと、頻発していることは残念としか言いようがない」
苦言を呈するレベルから、罰金だけでなく無観客試合や勝ち点剥奪の厳罰にまで踏み込んで言及された背景を探るには、まずは一連の流れを整理しておく必要がある。
コロナ禍で設けられたガイドライン違反として、Jリーグが把握している事例は浦和の2件だけ。試合前に大勢のサポーターが場外に集結し、埼玉スタジアム入りする選手バスを応援歌で鼓舞した5月21日の鹿島アントラーズ戦と先のガンバ戦となる。
このうち前者において、Jリーグ側が何度もヒアリングを実施したいと打診しても、浦和側が応じなかった舞台裏を野々村チェアマンは明らかにした。 「どのような理由なのかはわからないので、ここでは置いておきます。ただ、現場担当の間ではコミュニケーションを取りながら、こちらから『ステートメントを出してクラブのスタンスを明確にするべきだ』とか、あるいは『再発防止策をしっかりと明示してサポーターへ訴えるべきだ』と再三にわたって伝えてきたんですけど」
口調はソフトながら、クラブの意思を表明しない浦和へ、リーグが募らせてきた穏やかならぬ思いが伝わってくる。そこへガンバ戦が加わった。しかも、声出し応援の段階的な緩和へ向けて、Jリーグが運営検証を積み重ねている試合の対象外だった。
しかし、5日になって状況が一変した。