「V2テーマは稲妻」5.6東京ドーム決戦に挑む井上尚弥が獰猛な“ホワイトタイガー”なら弟の井上拓真は俊敏な“トカゲ”
プロボクシングのWBA世界バンタム級王者、井上拓真(28、大橋)が11日、横浜市内の所属ジムで同級1位・石田匠(32、井岡)との2度目の防衛戦(5月6日、東京ドーム)へ向けての練習を公開した。メインで“悪童”ルイス・ネリ(29、メキシコ)と対戦するスーパーバンタム級の4団体統一王者の兄・尚弥(31、大橋)との兄弟W世界戦は5年ぶり2度目。前回は拓真が判定負けしていただけに兄弟W防衛成功に向けて「稲妻」をテーマに掲げた。バンタム級は日本人が世界ベルトを独占する可能性があり、大橋秀行会長(59)は、このV2戦が拓真が望む団体統一戦の実現に向けて結果と内容が問われる“査定マッチ”になることを明かした。なお試合の模様はAmazonプライムビデオで独占生配信される。また明日13日より、大橋ボクシングジムの公式HPで「リセール・先着チケット販売」の販売がスタートする。
何もさせないで最終的に倒して勝つ
懸念されたダメージはない。
2月24日にIBF世界スーパーフライ級王座を9度防衛している強豪のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を9回に倒した激闘から、わずか2か月ちょっとの短い試合間隔だが、むしろプラス効果の方が多いという。
「いい流れのまま練習に入れたのでコンディションはいいんです。前回の試合まで作ってきた体をそのまま次の試合に向けての練習に入れましたからね」
ここまでのスパーは30ラウンドと多くないが、前回の試合前トレーニングの貯蓄と継続を考慮すれば、十分だろう。大橋会長も「今まで見た中で一番できがいい」と証言した。
対戦相手の石田は37戦34勝(17KO)3敗のキャリアを誇るアウトボクサー。3敗は2017年にWBA世界スーパーフライ級王者のカリッド・ヤファイ(英国)に敵地で挑戦した判定負け、2019年のIBF世界同級挑戦者決定戦でのイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)戦の判定負け、2021年に現4階級制覇王者の田中恒成(畑中)に判定負けしたもの。ヤファイ戦以外は僅差の判定でKO負けはない。
1m73と長身から放つ多彩なジャブが武器で、そこにボディ、右ストレート、左フックを絡めてペースをつかむのがパターンだが、拓真は、「教科書通りにジャブから突いてくる正統派。長身からジャブを突くが、何もさせないで完封して最終的には倒して勝ちたい。中間距離でも、接近戦でも勝っている。どんな距離でも圧倒したい」と豪語した。
父の真吾トレーナーもこうフォローした。
「石田選手はジャブがいいと思ってるが、負けないくらい拓真のジャブが伸びている。ジャブの差し合いでも負けない。右でも返しのフックでもすべてにつながっていく」
石田は大阪で行われた会見で、「アンカハス戦を見たが(拓真は)少しクリンチが多いイメージがある。クリンチなしで殴り合いたい」と挑発してきた。
距離をとって戦いたい石田陣営の陽動発言にも思えたが、拓真は動じない。
「そういうのが響かないタイプなんで気にならない。自分のやることを淡々とやるタイプなんで」
真吾トレーナーは「クリンチもテクニックのひとつ。近い距離になると、お互い様。ただくっついちゃうとパンチが出せない。くっついてもパンチの出せる距離を調整している」と明かした。