「井上尚弥戦はあきらめない」仕掛け人に聞く…“悪童”ネリvs“問題児”カシメロは本当に9月に日本で実現するのか?
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(31、大橋)に東京ドーム決戦で6回TKO負けした元2階級制覇王者のルイス・ネリ(29、メキシコ)と、元3階級制覇王者のジョンリエル・カシメロ(35、フィリピン)の注目カードが9月に日本開催で実現に動き始めていることが27日、明らかになった。カシメロとプロモート契約を結ぶ「トレジャーボクシングプロモーション」の代表で元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪氏(33)が筆者の取材に「ネリサイドと話を始めた」と明かしたもの。もし実現すれば世界的なビッグカード。評価を落としているカシメロが勝てば井上尚弥の対戦候補として再浮上することになる。
「恥ずかしくないファイトマネーをオファー」
“悪童”ネリvs“問題児”カシメロ。
モンスターを巡って火花を散らしてきた2人の対戦が実現へ向けて動き始めた。ネリのパンチ力は井上からまさかのダウンを奪ったことで証明済み。一方のカシメロも33勝(22KO)4敗1分けのハードパンチャー。KO必至で話題性も含めて世界的なビッグカードだ。
仕掛人は元WBO世界スーパーフェザー級王者でプロモーターに転身して以来、カシメロとプロモート契約を結び、元日本バンタム級王者の赤穂亮、元IBF世界ス―パ―バンタム級王者の小國以載(角海老宝石)らとの対戦など多くの話題のカードを提供してきた伊藤氏。すでにネリ陣営に「9月・日本開催」でカシメロ戦をオファーしたという。
「悪童対悪童。面白くないですか?ネリサイドと話を始めました」
東京ドームで井上から1回にダウンを奪うものの、3度ダウンを奪い返されて6回TKOでキャンバスに沈んだネリだがめげずにフェザー級転向を表明。一部のメディアは、昨年7月に井上に8回TKO負けした元WBC&WBO世界同級王者のスティーブン・フルトン(米国)との対戦計画があることを報じた。
数々のビッグマッチをプロモートしているサウジアラビアの娯楽庁長官であるトゥルキ・アラルシク氏が計画しているとされるもので、スーパーミドル級の4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)対スーパーライト級とウエルター級の2階級4団体統一王者のテレンス・クロフォード(米国)をメインとした「メキシコvs米国」の5対5マッチの実現をぶちあげ、そのひとつのカードにネリvsフルトンを候補として挙げたものだ。気の早いネリはXに「近日中に発表」「すぐに(やりたい)」などとリポストした。
だが、伊藤氏は「現時点でサウジアラビアからネリへのオファーは何もない」という。
現在WBA世界フェザー級1位にランキングされているフルトンは6月15日に米国で同7位のルイス・ヌニェス(ドミニカ共和国)と再起戦を戦うことが決まっている。6月1日には、サウジアラビアでのビッグイベントのアンダーカードでWBA世界同級王者のレイモンド・フォード(米国)がニック・ボール(英国)との防衛戦を控えており、フルトンが目指す路線はこの世界戦の勝者への挑戦で、ネリとの対戦は宙に浮く。伊藤氏からのオファーは再起戦としても魅力的だろう。
一方のカシメロは、昨年10月の小國との試合が不甲斐ない内容で偶然のバッティングによる4回負傷ドローに終わり評価を下げた。リングサイドで観戦した大橋秀行会長が「今日の出来では尚弥に勝てない。もうちょっと練習しなければダメだ」とコメント。井上も「興味が薄れた」と発言するなど対戦候補から脱落した。以来リングに立っていない。
井上の次期対戦候補とされるWBO&IBF世界スーパーバンタム級1位のサム・グッドマン(豪州)から6、7月の開催をメドに対戦オファーがあったが、立ち消えになった。それでもカシメロは“モンスター狩り”をあきらめていない。WBOでは、3位にランクされるなど、ギリギリ候補者リストには残っている。ネリ戦は、悲願の井上戦を実現するためにも重要な背水の“生き残りマッチ”となる。