なぜ日ハム新庄監督の“奇策”山崎福也「6番・投手」が成功したのか…「暗黙のルール」を解除できず内角攻めができなかった阪神の西勇ー梅野バッテリー
セパ交流戦の阪神―日ハム戦が30日、甲子園で行われ、新庄剛志監督(52)率いる日ハムが6-0で快勝した。オリックスからFAで移籍してきた山崎福也(31)が「6番・投手」でサプライズ起用され、投げては7回を3安打無失点でハーラートップの6勝目、打っては4回に決勝打となる先制タイムリーを放つ“二刀流”の大活躍で岡田彰布監督(66)が指揮を執る阪神を牛耳り、このカードで連勝、貯金を「9」とした。
インコースに1球も投げず
“新庄劇場”で“古巣をぐっちゃぐっちゃ”にした。
前日の甲子園凱旋の1試合目は、背番号「63」に「新庄監督」と書かれた阪神タイガースのユニホームでメンバー交換に現れて虎党を驚かせて岡田監督を苦笑いさせた。そして2試合目のこの日は変則スライド先発させた山崎福を「6番・投手」でスタメン起用したのである。
元々その打撃センスには定評があり、昨年の日本シリーズで目の当たりにしている岡田監督は「3番、6番もありえる」と“新庄サプライズ”を想定していた。だが、山崎福の「6番・投手」に対して西勇―梅野のバッテリーの準備は不十分だった。
2回一死一塁から回ってきた第1打席。元同僚でもある山崎福を打席に迎えると西勇は、なんともいえない笑みを浮かべた。マウンド上で喜怒哀楽を出すタイプの西勇が、明らかに意識していた。
全球アウトコース低めを中心に攻めてフルカウントとなり、結局、ストライクが入らず四球を与えた。山崎はベンチに向けて満面の笑顔でガッツポーズ。新庄監督を喜ばせ、甲子園をざわつかせた。
新庄監督は西勇の動揺を見逃さない。二塁走者の松本に三塁を狙わせる。スタートがディレー気味になり三塁でアウトとなり、得点には結びつけることはできなかったが、この四球が阪神撃破の予兆だった。
0-0で迎えた4回にマルティネス、松本の連打で再び無死一、三塁の先制チャンスを作ると、また6番の山崎福に打順が巡ってきた。
初球はアウトコースへのスライダー。それがボールになると、アウトコースへ投じた2球目のストレートが高めに浮いた。山崎福は見事なバットコントロールで「チョコン」と軽打すると打球は先制タイムリーとなってセンター前へ。
山崎福は「(打った球は)あまり覚えていないですが、来た球をヒットにしようと思って打ちました」との広報談話を回した。
新庄監督は雨天中止となった28日には山崎福を「7番・投手」で起用する予定だった。だが、この試合では6番に繰り上げた。
スポーツ各紙の報道によると、試合後に新庄監督は、6番抜擢の理由を「5(番)か6(番)で迷って、今みんなの調子がいいから、打点をつけてくれそうな感じで6(番)にした。甲子園のこの雰囲気で楽しそうに野球している福也君がやってくれそうな気がした」と説明した。
一見パフォーマンス重視の“勘ピューター”のようだが、実は、そこには綿密な計算があったのだろう。
阪神OBの某評論家は「バッテリーの困惑を誘った」と分析した。
「6番であれば暗黙のルールを解除しても良かったが、植え付けられた意識があって西勇―梅野のバッテリーにはそれができなかった。2打席で1球もインコースへのボールはなかったでしょう。あれだけタイミングがしっかりと取れてバットコントロールのできる打者に対してはインコースと落ちるボールを使わないと西勇の球威じゃ打ち取れない」