なぜ井上尚弥は注目のフェザー級挑戦を2026年に設定したのか…「スーパーバンタム級であと4、5試合」…9月対戦相手はTJドヘニーで1本化
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)が10日、羽田着のJAL機で米国ニューヨークから帰国した。井上は全米ボクシング記者協会が選ぶ2023年の年間最優秀選手賞の授賞式のために当地を訪れヤンキースタジアムでドジャース戦を観戦し、試合後に山本由伸(25)との交友の時間も持てた。刺激を受けて帰国した井上は、「アメリカで試合をやりたくなった」と語り、注目のフェザー級挑戦の時期について「来年いっぱいはスーパーバンタム級。あと4、5試合」と初めて具体的に明かした。また9月の防衛戦の相手は元IBF世界同級王者のTJ・ドヘニー(37、アイルランド)に1本化されたことも判明した。
ドジャース山本由伸と意見交換「刺激を受けた」
モンスターがニューヨークの“外遊”から帰国した。
黒いキャップにTシャツ、半パンのリラックスした姿で羽田に降り立った井上は、5泊6日の強行軍にも疲れた表情も見せずに記者団を前に帰国報告を行った。
「表彰式などで凄く期待されているなと感じた」
今回の渡米の目的は、その全米ボクシング記者協会の年間最優秀選手賞の表彰式だったが、偶然にもヤンキースタジアムでヤンキース対ドジャース戦があったため、観戦に訪れる機会を得た。しかも先発は山本で7回を無失点、大谷翔平は「2番・DH」で出場してドジャースが延長戦を制した。
野球好きで知られる大橋秀行会長が「隣にパウンド・フォー・パウンド(井上)がいて山本がジャッジ、スタントンを抑え込んじゃう。夢みたいで、鳥肌が立った」と興奮するほどだった。
「プライベートで野球を見たのはWBC(昨年3月の東京ドームでの日本ラウンド)と今回で2回目だけど(球場の雰囲気が日本と米国では)全然違った。アメリカ人はお祭り騒ぎというか、凄く楽しんでいる」
井上も米国のスポーツの力に感動を覚えた。
ホテルでは、バンタム級の4団体を統一したポール・バトラー戦を現地観戦するほどの井上ファンで知られる山本と歓談し体調管理などについて意見を交換するなどして意気投合。大谷とは時間調整がつかなかったが「他ジャンルのアスリートとの出会いは刺激になった」という。
翌日にはプロモートの一部を任せているトップランク社が主催したマジソンスクウェアガーデンのシアターホールでのボクシング興行を観戦し、中継したESPNに生出演するなどした。大橋会長によると会場に井上が姿を現した途端に会場に大歓声が起きて、ホテルや街中でも、写真撮影、サイン、握手を求める少年ファンが相次いだという。
「アメリカに来るにつれて知名度がかなり増していると感じる。試合でいい結果を出していることが、ついてきている」
予想以上の反応に井上は「またアメリカでも試合がしたくなった」という。
大橋会長も「ボブ・アラムさん(トップランク社CEO)もファンも望んでいると強く感じた。ファイトマネー次第では、それもありじゃないか」と可能性を示唆した。
井上は、これまでロス、ラスベガスで3試合を戦ってきたが、元WBC世界ウェルター級王者ショーン・ポーター(米国)が、「世界最高のスターになりたいならアメリカでの試合をする必要がある」と主張するなど一部の米メディアの間でも、モンスターの米再上陸を望む声が相次いでいた。
配信会社によるビッグマネーを背景に井上が切り拓いた軽量級のマーケットは、ボブ・アラムCEOが、「日本が世界の中心。井上が海外に出て戦う意味がない」というほど高まっており、井上自身も「今や軽量級の本場はここ日本。日本のマーケット以上のモノがアメリカにあるのなら喜んで行く」とXに投稿し、反論していた。
しかし、今回のニューヨーク訪問で井上の心境に変化が現れた。
「前に投稿したようなモノがアメリカにあるのなら、いきたいなと凄く考えている」
大橋会長が現地プロモーターと接触する中で、米国マーケットの井上の評価が人気の中、重量級クラス並みに跳ね上がってきていることを実感したのかもしれない。